名脇役 (ページ10)

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あの後Aは無事に帰れたのかとか

濱ちゃんが何を考えてたのかとか

そんなことばっか考えてたら全然眠れないまま朝を迎えてしまった

『重岡、おはよ』

大学に行くと、いつものようにAと会った

｢おはよ、ちゃうねん
昨日大変やってんで、お前｣

なるべくマイナスな気持ちは抑えて
笑顔で話すことを心がけた

『ごめん、迷惑かけたよね…
もうほんとにお酒は懲り懲りだよ』

｢あのあと……｣

『ん？』

｢あー、いや…、昨日あのあとちゃんと帰れたんかな思って」

『帰れたよ！
途中タクシーで目覚めたし！
ありがとね、ほんとに！』

｢それならよかったけど……｣

あまりにケロッとしすぎてて逆に変な感じがした

『あ、あと……』

｢ん？｣

『私、ほんとにもう濱ちゃんのことは諦めた』

｢え？｣

ほんまに？

あんな好きやったのに…………？

｢ほんまに、もうええの……？｣

『うん、だって言ったじゃん
濱ちゃんが止めに来てくれたら諦めるって』

｢そう、か………｣

なんやろ、嬉しくない

モヤモヤする

好きな人に好きな人がおらんくなった

普通、嬉しいもんちゃうん？

なのに、全然嬉しない

なんや、この気持ちは

それに、この違和感

『早く新しい恋見つけないとなあ〜』

そう言って俺の前を横切ったAからは

いつもと違う香水の匂いがした