６６ 最終手段 ページ16
２週間ほどかけてたどり着いた北西の国は、やはり戦争をしているせいかどこかピリピリとしていた。住民の顔にも笑顔はなく、どこかやつれている。
(食料が不足して飢餓が起きている、というわけではなさそうだけど…)
《気味が悪いですね》
特に老年になっていくにつれてその傾向は強いようだ。木造の魔法道具店の奥、窓の外から見えるカウンターに座ってる女主人の表情は暗い。
扉を開くと、ドアにつけてあるベルがカランカランと音を立てて、客の来訪を主人に伝える。
「こんにちは」
そう話しかけても、ああ…、と生気の抜けた返事しか返ってこない。きょろきょろと店内を見て回っても目ぼしいものはないが、とりあえず目の前にある金属製のブレスレットを手に取って、それをカウンターまでもっていく。
「これ、お願いします」
「ああ。んじゃあ、６３ガバゼル(約６３０円)ね。…あんた、旅人かい」
ごそごそと手に持っていたカバンから財布を取りだしている間、おばあさんが話しかけてきた。取り出した財布から料金をだしながら返答する。
「そうなんです。私、北に行きたくて。それでここに少し滞在して、それからまた出発しようかと思って」
小銭を手渡すと、それを数えながらおばあさんが呟く。
「ならさっさとこの国から出てったほうがいいよ。ここは戦争してるからね。私の息子も、あんたぐらいの孫も、みんな連れてかれちまったんだ」
「じゃあ、その人たちは今戦っているんですか？」
あたかも今知ったように振る舞いながら質問すると、気になる発言が聞こえた。
「ああ。まあでもお国が昨日、最終手段をとるから大丈夫だって発表してさ。いま味方の兵士を引き上げてんだって」
(最終手段だって？あの要塞国家を落とす戦力がこの国にあるとは思えないし、有名な策士がいるようにも思えない。一体…)
「最終手段…？」
疑問をそのまま口に出すが、それは国民でも知らされてないらしくて特にそう言った情報は履いてこなかった。お礼を言い、ブレスレットが入った紙袋を手にもって店を後にする。とりあえず先に宿を見つけなければならない。
道ながら人に宿への行き方を聞きながら、先ほど言われた「最終手段」とやらに思考を飛ばす。
(気になるな。どんな方法なんだ？誰かに援助を求めたのかな)
《ほかに国に救援を求めたのなら、分身から報告が入るでしょうし》
(そうなんだよね)
いくら考えてもそれらしいアイデアは出なかった。
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作者名：西 | 作成日時：2017年5月22日 21時
