５１ 再会の店 後編 ページ1
「変わってないな」
そう言いながらバシェラーの左から出てきたのはヘイリーだった。こげ茶の髪を短くそろえた男はなんとジャックよりも背が高い。
「うわ二人ともおっきくなったね！」
正直にそういうと二人は「子ども扱いしないでくれ」と言いながら顔を赤くして照れている。根本的なところはやはり変わっていないらしい。
「私は私は！？お姉ちゃん私は？」
さらにその後ろから出てきた女の子、メアリーは大きくなっていた。どこがとは言わないけれど、大きい。そして綺麗になった。金色のうねった長い髪をおろし、その瞳には青い空が映っているようだ。
「メアリーも大きくなったねー」
よしよしと頭を撫でてやれば、嬉しそうにはにかむ。そのまま私に抱き着いてきて、久しぶり、と声をかけてくれた。
「メアリーさんの場合は、背じゃなくて胸の話じゃないんでっか？」
言葉を抑えることを知らないケモンにメアリーの鉄槌が入る。これもいつもの通りで、いや「いつも」が久々にもかかわらずできることに、少し寂しく思う。それだけ時間が過ぎたということだから。
「まあまあ、ほら姉さんも座って」
とジャックが笑いながら椅子を引いてくれる。隣はバシェラーのようで、すでに座っていたその手にはビールが注いであった。
「ありがとう」
ジャックから手渡されたビールを片手に持ち、「えー、本日はお日柄もよくー」なんて言葉から始まるタモンの音頭で乾杯をする。かしゃん、と鳴るグラスジョッキの中で揺れる液体は、次の瞬間には体の中だ。
そこからは無礼講などんちゃん騒ぎだった。運ばれた料理を食べ、飲み、昔話や最近の出来事を語り合う。最後には一階のフリースペースに降りて踊ったりもした。技術も何もない踊りだけど、周りの人も参加してくれたり音楽を演奏する人たちもいて、終始楽しい雰囲気だった。
宴もたけなわ、メアリーやジャックと手を繋いでくるくる回っていると、今まで二階にいたバシェラーが降りてきて、私の目の前で止まった。
思い返せばバシェラーは今日あまり酒を飲んでいなかったような気がする。明日用事でもあるのだろうか。それともどこか体が悪いのだろうか。
「バシェラー？どうし…え？」
バシェラーに向かい合うと、メアリーとジャックが私をバシェラーのほうに押してから離れていく。タモンとケモンも遠巻きに見るだけだし、ヘイリーに至っては二階から見下ろしている。
「え、な、なに？？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 41人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：西 | 作成日時：2017年5月22日 21時
