___176 ページ26
.
来週にオープニングセレモニーを控えた私たちは
今日がその最後の打ち合わせだった。
せっかく忙しい中時間を割いて
来てくれたのに今更ながら罪悪感が押し寄せる。
何も聞かずずっと側にいてくれた彼に向き合う。
予想以上に近い距離。
困ったように眉を下げる彼の目を見た。
.
「……ごめんね、急に泣いて。」
「…別にええよ。」
.
優しすぎるその声に
また涙が出そうになる。
.
「……ッ何も聞かないんだね。」
「…何もって？」
「……そのッ…なんで泣いてるのとか……ッ」
「んーそやなぁ。
まぁ聞かんでも大体わかるしな。」
.
ペタンと座り込む私に
向かい合うようにあぐらをかいて座っている彼。
少し猫背な小瀧くんは
座ってても体の大きさがよくわかる。
ぐちゃぐちゃな顔で見上げる私に
相変わらず優しい口調の彼は
目から涙が溢れないようそっと指ですくってくれる。
.
「……わかるの…ッ？」
「んー、まぁ大体な。」
「……なんで…ッ？」
「んー、なんでやろ。」
,
そう言うと小瀧くんは
さっきよりも近いところに座り直した。
一瞬ビクッとなったけど
すぐにそれは安心感に変わる。
私は近づいた小瀧くんの大きな体によって
包まれていた。
.
「……好きやから。
………とか言ったら怒る？」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 352人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：めいろ | 作成日時：2018年5月29日 17時
