ケモノの国 (ページ11)

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シロギツネさんと雑談しながらしばらく歩いていると、突然シロギツネさんがピタッと足を止めた。急に止まるものだから、僕は危うくぶつかりそうになった。

「どうしたんですか？」

シロギツネさんが何かを言う。

「……きさ…………ま……わ」

「え？」

僕がそう聞き返すと、シロギツネさんがもう一度先ほどより少し大きい声で言った。

「行き先を決めていませんでしたわ……」

「あ……」

忘れていた。あんなに張り切って準備をしたのに、肝心の行き先を決めていなかったとは、なんと間抜けなことだろう。

「……」

「……」

数秒間、沈黙が流れる。

「……とりあえず、一番近くの宿へ行きましょう。」

「……そうですね、そこで決めましょうか」

「えーっと、ここから１番近い所は……」

シロギツネさんが地図を広げる。そして、地図のある部分を指差して言った。

「『エナガの宿』……ですわ、とりあえずそこに行きましょうか」

「はーい」

また、雑談しながら歩いて行く。

「そういえば」

僕がそう言うと、シロギツネさんがこちらを向いた。

「シロギツネさん達以外のケモノさんって、どんな方がいらっしゃるんですか？」

「そうですわねぇ……ホッキョクオオカミさん……まあ、キタオオカミさんとお呼びしていますが、とかそのあたりですわね
この辺りは寒いので、あまりケモノはいないのですわ」

「へぇ〜…そうなんですね」

徐々に地面も北極っぽい感じから土に変わっていき、それにつれて空気も暖かくなっていった。目的地につく頃には、もう日が落ちようとしていた。

「……ここですわね、エナガの宿。早速入りましょうか」

シロギツネさんに続いて中に入ると、僕より少し小さいくらいの男の子がお出迎えしてくれた。

「ようこそ！何名様でしょうか？」

ニコッとしながら言ったその子の腕は、まるで鳥のような翼になっていた。エナガって、確か鳥の名前だった気がする。だから腕が翼になっているのか？
そんなことを考えていると、シロギツネさんが僕に声を掛けた。

「Aさん、部屋が決まりましたわよ。そろそろ行きましょうか」

「あっ、はい！」

そのまま僕たちは部屋へ向かった。