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朝の日差しで目を覚ます。見慣れない天井。どうやら、昨日の出来事は夢ではなかったようだ。
「あら。おはようございます、Aさん」
暖炉の部屋には、シロギツネさんがいて、朝食の準備をしていた。
「おはようございます。あの、何か手伝いましょうか?」
「ふふ、大丈夫ですわ。Aさんは、そこでくつろいでおいてくださったらいいんですわよ。」
「本当、ありがとうございます……」
ソファーに座る。
「あ、シロギツネさん。」
「あら、何ですの?」
シロギツネさんの耳がピクリと動く。
「あの、僕って、これからどうすればいいんでしょうか」
料理する手を止めて、シロギツネさんが僕に聞く。
「……Aさんは、こことは別の世界から来ましたの?」
真剣な様子のシロギツネさん。
「多分……。気が付いたらここにいて……。僕、やっぱり人の世界に帰りたいです」
あんな世界だったけど、やっぱり僕にとってはふるさとなんだ。
シロギツネさんが口を開く。
「Aさんには、まだこの世界について詳しく説明していませんでしたわ」
「この世界には、人と獣の中間の存在である、ケモノたちが暮らしていますの。心に深い傷を負った人が迷いこむこともありますわ。その場合、多くは化け物の餌になって、もう二度と元の世界には帰れなくなりますの。」
心に深い傷を負った人……おそらく僕もそうだろう。
シロギツネさんが続ける。
「もし、運良くケモノに保護されたとしても、元の世界に帰る方法は……私の知る限りでは存在しませんわ」
「ここで一生暮らしてもいいし、帰る方法を探してもいい」
シロギツネさんが僕の方を見る。
「Aさんは、どうしますの?」
今、あの世界に帰っても、僕の欲しいものはもうないだろう。それなら、ここで暮らすのも悪くはないかもしれない。でも。菖は、僕のことを守ってくれたじゃないか。いつも一緒にいてくれたじゃないか。それを、無駄にしていいのか。
違う。僕は、
「帰りたい……!」
「ふふっ」
シロギツネさんが微笑む。それを見てきょとんとした僕に、こう言った。
「Aさんだけじゃ心配ですもの。私もご一緒します!そうと決まれば早く食事にしましょう。腹が減っては戦は出来ぬ、ですわ!」
「……はい!」
しばらくして、シロギツネさんがご飯を運んで来た。それを食べ終わると、シロギツネさんが、『冒険の始まりですわ!』と言って、いそいそと準備をし始めていた。
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るか - 面白かったです (2019年9月15日 22時) (レス) id: 453cf00967 (このIDを非表示/違反報告)
セイキン - 面白かったです (2019年8月21日 1時) (レス) id: 453cf00967 (このIDを非表示/違反報告)
卯月はかせ - 面白い……! 瑠璃狐は一体何者なんや……! (2019年8月21日 1時) (レス) id: d742f00055 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まふぃーる | 作成日時:2019年5月5日 18時