2人の距離 ページ22
「望も元気そうで良かった」
「…A、顔見たい」
寂しそうに呟いた。
私は幸せな方だったのかもしれない…
テレビで望を確認できたり、今だって…
こうやって確認できてる。
部屋にあったマスクをして、玄関を開けていた。
「勝手に来てごめんな」
玄関に望が入ったから、後ろに下がる。
今までではあり得なかった2人の距離。
「ううん、会えて嬉しい」
「あ〜…切ないな、この距離」
「うん……」
「飛沫でうつるんやろ？」
「そうだね、そう言ってた」
「A、喋らないで」
そう聞こえた次の瞬間、私は望の腕の中にいた。
久しぶりに感じた温もり。
言いたいことはたくさんあるけど、黙ったまま。
それはきっと望も同じ。
しばらくそうして、またさっきの位置に戻った。
「また、連絡する」
「うん、気をつけてね」
「帰るわ」
そう言ってドアを開けた望に伝える。
「望、ありがと……大好き」
「マスク取って」
「え？」
さらに後ろに下がってマスクを外す。
「笑って」
ちゃんと笑えてるんだろうか？
言われた通りに笑った。
マスクを外した望が満足そうに笑った。
「オレも大好き、がんばろ」
そう言ってドアが閉まった。
がんばろ……
いつまで続くかは分からないけど…
ずっとじゃないから、今はがんばろ。
同じ気持ちなら大丈夫。
久しぶりに見た笑顔にそう思えた。
終わり
…………………………………………………………
皆さまも体調気をつけて、お過ごしください。
作者より
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作者名：めい | 作成日時：2020年10月2日 23時
