〇3話〇 ページ4
入荷した新書を陳列しようとダンボールを持とうと奮闘するも、上がりもしない。
店長め、せめてダンボールから出して机に置いてくれればいいのに…
どうにか持ち上げないとと力をまた込めたところでふっと軽くなる。
そして薄い柔軟剤の香りが鼻を通った。
顔を上げるとカノ君がダンボールを持って眉毛を下げている。
「これ、重いんだから、Aちゃんのその腕じゃ落としちゃうかもでしょ。落としたら足とかに当たって危険だよ。」
これは僕が持つねと笑う。
カノ君らしい優しさに顔が赤くなり下を向いてしまう。
お礼を言わないとと顔を上げてありがとうと自然と笑みがこぼれた。
カノ君は目を見開いた後、二秒くらい固まった。
『…?』
そして重たいダンボールを持ちながら裏を出る。
なんだったんだ、あの間。
私も手伝おうと裏を出た。
カノ君はもう新書の陳列を始めていた。
どうやら上の棚らしく、頑張って手を伸ばして入れている。
急いで折りたたみ式の二段踏み台を持っていく。
『カノ君!』
これと踏み台を立たせてカノ君のそばに置くも、どこか不満な様子で…でもいつものようにヘラヘラしてありがとうと返し、踏み台を使って本を陳列し始めた。
私はカノ君に次に入れる本を渡す作業をする。
二人でやったおかげで直ぐに終わった。
踏み台を元の場所に戻そうと手を伸ばした。
「待って、」
とカノ君の声によって手が止まる。
『…ん?』
「僕みたいな背のちっさいお客さんもいるかもしれないしさ、ここに置いておこうよ。」
どこか不自然な笑顔に少しムカついた。
『カノ君、なんでそんな無理して笑うの?』
「…へ?」
『それに、カノ君私より背高いんだしちっさいとか言われても…まぁお客さんにとってはありがたいかも。私チビなのに気が付かなかったな、そこんとこ。』
じゃあここに置くってことでと踏み台をそのままにする。
カノ君は、先程までの不自然な笑顔とは違った、はにかんだような笑顔で私は笑顔だけで表情コロコロ変わる人だなと思った。
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作者名:めみ | 作成日時:2015年3月1日 16時