page、04 ページ5
擂鉢街とは、擂り鉢状に窪んだ地形にできた街。
表社会には住めないような、日陰の民たちが住む場所。
斜面のついた、その街の下り坂を、太宰は歩いていた。
真剣な眼差しで、自、殺にまつわる本を読みながら。
その、太宰の後ろを歩いているのは、
広津、紳士然とした外見の壮年の男。頭髪は黒と白が混ざっている。
この辺りの地形に詳しいとのことで、太宰に道案内兼護衛の役を任命された。
マフィアの構成員である。
この二人は、朝からこの擂鉢街で聞き込みを行っていた。
今はその帰り道、仕入れた情報を報告に行くところだった。
「その……太宰さん。あまり先に行き過ぎませんよう。私が護衛しているとはいえ、この辺りは抗争地域。何が起こるか判りませぬ」
「抗争？」
広津が頷く
「現在マフィアと敵対中の組織は三つあります。《高�麸髻奸團殴襯魯襯函Ε札�ュリテヰ・サアビス》、そして三つ目の組織が現在もこの付近で抗争を続けています。極めて風変わりな、かつてない型の敵でして……正式な組織名はなく、あるのは《羊》という素朴な通り名だけです。今週だけでマフィアの班がふたつ落とされています。特にリーダー格の男が非常に厄介で＿＿」
「ふうん……道理でさっきから、賑やかな訳だ。ま、どうでもいいけどね……」
太宰は無関心、というように云った。
ちょうどその時、太宰の懐に収められていた携帯電話が電子音を鳴らした。
「森さんだ」
太宰が耳に携帯電話を押し当てる。
「もしもし？うん、聞き込みは完了。色々判ったよ。え？どうやって、って……出来るよそのくらい。そうだね、結論から言うと」
そこで言葉を切った太宰はどうでもよさそうにその続きの言葉を紡いだ。
「先代はいたよ。蘇ったんだ。地獄の底から＿＿黒い炎に包まれて」
電話の向こう側から上ずった声が聞こえる。
「ま、兎に角帰って詳しく報告を＿＿」
次の瞬間。
太宰の体躯に何かが高速で激突した。
太宰の体が水平に吹き飛び、背後にあった小屋に背中を打ち付け。
「太宰さん！」
広津が太宰の名前を呼んだ。
『ま、兎に角帰って詳しく報告を＿＿』
そこで電話口の声は消え、激しい衝突音がした。
暫くしてから、携帯電話がツーッ ツーッという音が電話口から聞こえた。
「おやおや、」
薄暗い部屋で、白衣の男が呟いた。
「却説、これは少し厳しいかな…君も行ってくれるかい？エミリーちゃん」
暗闇にいた少女がこくりと頷いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 49人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
酸素無駄遣い装置 - みのりさん» 嬉しいです。有り難うございます。更新、なるべく毎日できるように努めます。 (2019年8月17日 10時) (
レス) id: 8cc010c4ca (このIDを非表示/違反報告)
みのり - 初コメ失礼します！酸素ちゃん、更新頑張ってね？応援してるよ！ (2019年8月17日 6時) (レス) id: 671f4436ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
