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「どうだった?」
「物凄く美味しかったです!」
「良い食べっぷりだったね。満足してもらえてよかった」
「こちらこそ、ご馳走様でした」
お肉をたっぷり堪能した私はほんの少しお酒も飲んでいて物凄く良い気分で松川さんと会話をしていた。右手は松川さんの左手を握っている。ゴツゴツとしたような手ではなくて、細くて、大きな手をしていた。その指で、いつも触れられているのだと思うと、途端に恥ずかしくなる。でも今は酔っているから、顔がどれだけ赤くなろうとも、アルコールのせいにできるから良い。
繋いだ手から松川さんの温もりを感じる。暖かい。少しだけ、ほんの少しだけ握る手に力を込めた。
「っ……ま、つかわさん?」
ほんの少し力を込めただけだったのに、松川さんは仕返しのように指を絡めて力をぎゅっと込める。所謂恋人繋ぎに思わず声が出た。松川さんを見上げると、まっていましたとばかりに松川さんはの手が伸びてきて頰を撫でられる。
ああ、これは、ダメなやつだ。
少しでも動いたら当たってしまうだろうその距離で、松川さんは私に選択肢を与えた。
「キス、してもいい?」
ずるい人だ。私にそんな選択肢を与えるなんて。わかっているくせに、逃げられないことも松川さんが逃す気もないことも、それを私がわかっていることを松川さんはわかってるくせに、それを私に選ばせるなんて、あまりにもずるい。
「わかってるくせに、そう言うことを言うのはずるいです……」
そう言うと松川さんはクスリと笑って、今までのキスよりも、長くて、甘いキスを私に落とす。数回、触れるだけのキスを落として、舌で私の唇を突いた。ゆっくり口を開くとその僅かな隙間からヌルリと入ってきた松川さんの舌は熱い。
月だけが二人の口づけを見ていた。
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作者名:お湯 | 作成日時:2019年5月9日 19時