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理性と本能 ページ25

のんびりと過ごしていた春とは一転して夏から冬にかけては繁盛期なので営業課はあっちもこっちも大忙し。仁花は人事部に異動になってしまい、仕事を覚えることで忙しいようでなかなか二人で落ち着いてお昼ご飯を食べられていない状況だった。


多少の連絡は取っているものの、松川さんとのことは言っていない。友達で、同期とは言え社内で如何わしいことをしていますとは言えないけれど、この気持ちは仁花には直接伝えたいと思って次一緒にご飯を食べる時に、と思っているのだけれど……忙しくて時間だけが過ぎて行く日々を過ごしていた。


 屋上でキスして以降、松川さんは隙あらば人目を盗んでキスをしてくるようになった。資料作成の為に過去のデータ化がまだされていない物を資料室から探し出して持ち出す時、屋上でお昼ご飯を食べる時、給湯室で一人でお湯が沸くのを待ってる時に不意打ち。いつ、誰に見られるかもわからないと言うのに松川さんはキスしてくる。



 触れるだけのキスは本当に一瞬で、でもいつまでも慣れないで赤面する私を見て楽しそうに笑う松川さんに惹かれているのはもう、どうしようもない事実だった。


「終わった〜!」
「お、なんとか定時までに終わったね。お疲れ様」
「はい、もう残業コースかと思いました」
「まあ午後の取引先との予定、先方のミスで来週になってよかったね」
「正直ラッキーって思っちゃいました」


 過去の書類を見ながら、現在と過去の売り上げを比較する表を作成していたのだけれど、途中から数字がどうにもおかしいと思って書類と画面を見比べていたら過去の書類が今回使う年数のものではなかったことがわかった。大慌てで資料室から正しいものを借りてきて修正していたのだ。


正直、午後に取引先に出向いていたら今日は帰れないこと間違いなしだった。だから、電話で先方から日時を間違えていたと連絡があった時に嬉しくてニコニコしてしまった。その様子を隣で松川さんが不気味そうに見ていたらしくどうしたのかと聞かれて事情を説明すれば今日はついてるね、と言われた。


「時間内に終わったし、どこかにご飯食べに行く?」
「いいですね!お肉食べに行きましょうお肉!」
「はいはい、肉ね」
「なにか」
「いや、まあ、俺は肉つきのいい女の子は嫌いじゃないよ」


 嫌いではないが好きでもないのでしょう―――――?
その言葉は口から出る前にのみ込んだ。
 


 

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設定タグ:ハイキュー , 松川一静   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:お湯 | 作成日時:2019年5月9日 19時

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