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暖簾を片手で上げて店内に入る松川さんに続いて入ると店員さんの「いらっしゃいませー!」という元気な声で出迎えられた。
松川さんが店員さんに「先に2人入っているのですが」というと店員さんが「ご案内します」と言って店の奥のほうへ案内し、部屋に入れば及川さんと英がすでにビール片手に枝豆をつまんでいた。
「やっときたー!遅いから先に始めちゃったよ」
「悪い、俺等も何か頼もう、Aちゃん何飲む?」
状況が全く理解できていない中、隣になった英からドリンクメニューを渡されて、口から出たのは「とりあえず生で」だった。
思わずいつもの癖で口走ったが今日は仲良しの女の子たちではないことを思い出す。
「Aちゃん生飲めるんだ!意外〜」
「あ、はい、つい、いつもの癖で…」
「いいんじゃない?俺も生にしよ」
「松川さんいつも飲むの生じゃないですか」
「まあね」
結局全員生ビールを頼んでくるまで枝豆をつまみながら及川さんの恋愛事情を聞き流していた。
「聞いてる?Aちゃん」
「はい、当たり前じゃないですか。及川さん受付嬢の佐々木さんは人妻なんですから手をだしたらだめですよ」
「違うよ!!全然聞いてないんじゃん!」
「人妻はだめだなあ及川」
「人妻はさすがにダメですよ及川さん」
適当に口から出たただのおふざけに松川さんと英が乗ってくれた。まあ、言い寄っているのは佐々木さんの方らしいのだが。
やっときたビールで乾杯をして喉にビールを流し込む。仕事の後のビールほど美味いと感じるものはないだろう。あっという間に飲み干してしまったビールをもう一度店員さんに頼むと及川さんが驚いたように声をあげた。
「Aちゃんペース早くない?」
「そうですかね?」
元々他の人よりも多少はお酒に強く、ペースも早いがいつもは友人たちと飲んでいて分かりきっていたことでそういう風に言われるのは久しぶりだった。
すこしペースを下げようか、どうしようか。
そんなこと考えていたら松川さんが勝負を挑んできた。
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作者名:お湯 | 作成日時:2019年5月9日 19時