カメラロール【橙】

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『めっちゃ良くなかった…？』
「めっちゃ良かった…」
『いや本当、ね、』
「Aめっちゃ泣くやん」
『康二くんにだけは言われたくない』


上映中、2人してハンカチを握りしめてた私たちは、
映画が終わって館内が明るくなってもなかなか退場することが出来なかった。


『康二くんだってすぐ胸キュンシーン頭抱えてたじゃん』
「いやそっちはその時点で泣いてたやろ」
『だって良かったんだもん』
「ほんまに良かった」



キスシーンとかの度に隣が撃たれてて少し気になった。

感想とか話しながらお昼を食べにカフェに移動。



「何にする？」
『あ、パンケーキある』



メニューにある写真を指さす。
すると康二くんが私の手を掴んでずらした。



「Aこんなクリーム大量の食べられへんやろ」
『え、食べれるよ』
「いや無理やって。もっとご飯系のにしぃや」
『でも前パンケーキ食べれたよ』



前どこかに先輩たちと出かけた時、パンケーキ頼んだけど美味しく食べれた。
そう言うと康二くんがまた首を振る。



「あれ先輩とシェアしてたからやん。やめとき」
『えぇ、平気だよ』
「もー無理言うても知らんからな」



結局私はパンケーキで、康二くんはパスタを頼んだ。
想像よりもクリーム多くてちょっと大丈夫かなと思ったけど、でも1口食べたら普通に美味しくて。


『ねぇ美味しいよこれ！』
「ほんまに？」
『ほんまに！』


ほら平気じゃんって。
美味しいよって食べ続けてたんだけど。


『…』
「ちょっと、Aさん」
『…何？』
「手止まっとるけど」
『…そう見える？』
「だから言うたやん」



返す言葉もない。
甘ったるい口を誤魔化す為に水を飲む。

そんな私を見て「顔！」と笑った。



「ほらもう、はい」
『え？』
「交換」



そう言って自分のパスタとお皿を交換してくれた。
1口食べて「甘っ」って康二くん。



『え、いいよ食べる』
「ええって。デザート」
『でも』
「代わりにそれ食べてもらってええ？」



もう味飽きたわって。
絶対嘘なのに。

申し訳ないと思いながら1口食べる。



『ん、美味しい！』
「ははっ、やったやん」
『ありがとう』
「ほんまに仕方ないな〜Aは」



わざとらしくため息をつかれる。
『すみません』って頭を下げたら「も〜」って笑われた。


底なしの優しさにきゅんときて、
お世話されてる感じが嬉しくて、私も笑ってしまった。

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