私の "元" 王子様【黒】 (ページ10)

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その日の夜から本当に電話がかかってくるようになった。

話すことはどうでもいいことばかりだけど。
夜ご飯何食べたとか、テレビ何やってたとか。

「俺の次に好きになった奴いる？」

って聞かれた時ばかりは、光の速さで通話を切った。
そのあと、

Aバカか

とだけメッセージ送って、寝た。

_ _ _

ある日、放課後帰ろうとしたら廊下で先生に呼び止められた。

溜まっちゃってて申し訳ないけど貼っておいてって大量のプリントを渡される。

「量多いから目黒と2人で」って。

まわれ右して教室に戻ると、もう蓮のリュックはなかった。

「今日部活1年ちょっと早く行かないとなんだよね」ってお昼に言ってたのを思い出す。

うわ、1人だ。
仕方ない。まぁいっか、貼るだけだし。

リュックを机に置いて黒板横の掲示板を見上げる。
下はもう埋まっちゃってて、空いてるのは上のスペースしかない。

『…私届くか、？』

背伸びをしたけど当然届かなくて机に乗ってみた。
それでも届かなくて途方に暮れる。

ええ、どうしよう。

仕方ない。
仕方ないけど、今は180cm越えの人間にいてほしかった。

机に椅子乗っければいけるかなって思って乗せてみる。
危ないかなって思ったけど、案外安定してて何とかなりそう。

よいしょ、って机に乗って、椅子に足をかけたその時。

「、え、宮崎さん！？」
『あれ、阿部くん』
「え、何やってんの！？危ないよ降りて！」
『いやでも割と安定して』
「いいから降りてって！」

阿部くんの勢いに負けて渋々机から降りる。
駆け寄って来た阿部くんに速攻で椅子を下ろされた。

「危なすぎでしょ、ダメだよ！」
『でも届かなくって』
「俺やるよ。画鋲貸して？」
『え、阿部くん届く？』
「届くわ！」

そう言って机に登ってプリントを貼っていく阿部くん。
背伸びをせずに1番上に画鋲を刺す。

『えーすごいね！背高かったんだ！』
「え、俺ちっちゃく見えてたの！？」

画鋲を受け取りながら笑う阿部くん。

小さくないことはわかってたけど、こんなに背高い印象はあまりなかった。

『何だろ、可愛い感じだからイメージなかった』
「なにそれ(笑)」

ぴょんっと机から降りて、終わった〜ってニコニコの阿部くん。
…うん、やっぱ可愛い。