私の "元" 王子様【黒】 (ページ33)

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翌日、土曜日。

制服を着た私を見てお母さんが不思議そうな顔したけど、赤点取ったって言いづらくて「先生の手伝い」って言って家を出た。

学校に着いて、靴を履き替えて教室に向かう。
深呼吸してドアを開けると、私の後ろの席はもう埋まっていた。

「あ、おはよ」
『おはよ。早いね』
「いやさっき来た」

眠そうな彼の姿を見て思わず笑う。
席についたら、ちょうど先生が教室に入ってきた。

「国語、補習お前らだけだぞ」

「宮崎過去問渡したろ」って呆れられて
『だからやばいって言ったじゃないですか』って返したら「確かにな」って笑われた。

古文と現代文のプリント1枚ずつ渡されて、
「終わったら呼んで」って教室に残される。

どうせ私たち以外誰もいないから、机を向かい合わせでくっつけて課題を始めた。

眉間に皺を寄せて、「？」をいっぱい浮かべてる蓮を見て、何だか照れ臭くなる。

恥ずかしがってる場合じゃない。
ちゃんと、私も。

『…蓮』
「ん？」
『私ね、中学の時すごい好きな子がいたの』
「…え？」

　

私の言葉に顔を上げる。
そのまま続けた。

『かっこいい子でね、私以外はみんな何であの子？って言ったりしてたけど、私は一目惚れしちゃって』
「…」
『サッカーやってたんだけど、みんなが帰った後もずっと1人で練習したりしてるすごいかっこいい子だった」

誰もいない校庭とか、休みの日の公園とか
1人で練習してる彼を何度も見かけた。

『もう本当に好きで。その子のこと王子様って呼んでるくらい好きだったの』
「…」

ここから先は、あなたも知ってる話。

『でもそれをその子に聞かれちゃって、すごい恥ずかしくて。それからその子すごい人気者になって、もう手の届かない人になっちゃって』

そんな人を好きになった自分が恥ずかしくて、ずっと避けてきた。
自分の黒歴史にした。忘れようとした。

でもダメだった。

『…忘れかけてた時、その子が直接、私の黒歴史掘り返しに来たの』
「……うん、」

さっきよりも「？」が浮かんでる蓮の顔。

もう少し待って。
もう少しでちゃんと答えられるから。

『すごい嫌で嫌で仕方なかったんだけど、
でも私、気づいたんだよね』

避けようと思えば避け続けられた。
ずっと無視もできた。

だけど入学式からずっと、

私は蓮の隣にいた。