私の "元" 王子様【黒】 (ページ25)

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無言で引っ張られ続けて、廊下から非常階段に出る。
ドアをバタンと閉めて、蓮が私と向き合った。

『…え、ちょっと蓮、』
「……まじでさ、」

私の肩に両手を置いて俯く蓮。
ハ〜って長いため息。

「本当、Aバカだよな」
『…は？』
「まじでバカ」

え、何急に、え、
ここまで連れてきて悪口大会？

戸惑っている私をよそに続ける。

「俺のこと好きだったくせに」
『え、ちょ、やめてよ』
「王子様とか言っててくせに」
『ねえ！』

王子様いじりしないって言ったじゃん！
そう言おうとしたその時。

「何でもう俺のこと見てねーんだよ…」
『……え、？』

……え、
え、どういう、

すると、俯いていた蓮が顔を上げた。
綺麗な顔が私を見つめる。

「Aが好き」
『……え？』
「中学の時からずっと、Aが好きだった」

………は？

本当に、
本当に何言ってるの、この子。

『だからAが王子様って言ってた時めっちゃ嬉しくて、何て話しかけようかめっちゃ考えてたのに、
お前次の日から俺のこといないもの扱いしてたよな？」

結構傷ついたんだけどって蓮。

「だからもう1回見てもらえるように、前髪上げたり体育祭めっちゃ頑張ったりしたけど、Aだけは1ミリもこっち向かねえし」

「高校も俺じゃ一生無理みたいな頭いいとこ行くし」

「俺推薦もらうのまじで大変だったんだからな」

まじで何なの？って前髪をグシャッとかき上げる。

どんどん畳みかけられて全然処理できない。

だって、

ずっと好きだったって、

蓮が私を？
私の王子様期からずっと？

は？

「結構わかりやすくアピールしてきたつもりだけど、A全然気づかないからやり方変える」

「好き」

「もう1回俺のこと見て」

突然の衝撃に、息をするのも忘れるような感覚で、

気がついたら自分の部屋にいた。

明日の国語の範囲をペラペラめくるけど、全く頭に入ってこない。

だって、

だってだって、

『……ええ？』

意味がわからない。

色々と、意味がわからない。