私の "元" 王子様【黒】 (ページ22)

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3人で駅まで歩いて、亮平くんだけ反対方向だからホームでバイバイ。

「おつかれ！コピーもありがとね！また明日！」

私たちが見えなくなるまで手を振る亮平くんの姿に
2人で息をついた。

『…優しさの塊だね…』
「まじで優しい。やばい阿部ちゃん」

ちょうど電車が来て慌てて乗り込む。
席が空いてたので並んで座った。

電車に揺られながら亮平くんの優しさについて話してたら、自分の不甲斐なさに申し訳なくなってきて。

だから、思わず口にしてしまった。

『…ごめんね、なんか』
「何が？」
『私が教えるって意気込んでたのに、結局パニクっちゃって亮平くん頼みだし。全然役に立てなくてごめん』

せっかく頼ってくれたのに。
そう言うと、軽いデコピンが飛んできた。

全然痛くないけど、反射で「痛、」って声が出る。

「何言ってんの？」
『…』
「Aもめっちゃ教えてくれたじゃん」

「このコピーだって」ってファイルをリュックから取り出す。

「こんなの役に立ちまくりでしょ」
『…でも、』
「Aは優しすぎるよ」

阿部ちゃんもだけどって付け足す蓮。

「こんなに人に優しく出来る人、そうそういないよ」

まじでありがとって頭を撫でられる。

……やめてほしい。
今優しい言葉をかけるの、やめてほしい。

「俺なんて全部甘えっぱなしだからね？」
『…それは、確かに』
「否定しろよ」

事実だけどさって笑う。
その笑顔につられて私も笑った。

『…蓮も優しいね』
「え？」
『ずっとかっこいいままだね』

そう言うと、蓮の顔が固まった。

「……は、？」
『中学の時から、ずっとかっこいいまま』

人を素直に認めて褒めることができて。
人の気持ちを敏感に察知して、支えてくれる。

もしもあの時、蓮に話を聞かれてなかったらまだ王子様って推してたかなってちょっと思った。

……やめよ、考えただけで恐ろしい。

『ダメだ掘り返すもんじゃない……え、蓮？』
「……ずる、」

隣を見ると、頬に両手を当ててる蓮。
…え、どうした急に。

『……え、なに小顔ポーズ？小顔のくせに？』
「…ほんとずるい」

そう言って向こうを向いてしまった。
少しだけ耳が赤くなっていた気がした。