私の "元" 王子様【黒】 (ページ18)

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『…え、ねえ、お題、』
「ん？」
『いや、どういうこと？あれ』
「え？だからかわいい人」

キョトンとした顔をされて、こっちが戸惑う。
いや何を当たり前のように言ってるの。

『…何で私、』
「え、いや可愛いから」
『……は、』
「俺がA可愛いと思うから」
『…』
「だから借りた」

あまりにも自然に言われて、もう何で返せばいいのかわからなくなった。

『…私も借り物しないとだったんだけど』

その結果、全然的外れな言い返しをしてしまった。

私がいないことで人数が足りなくて委員の人たちが騒いでるのに気づいて、蓮の隣から立ち上がる。

事情を話して、最下位のレーンに並び直した。

" 可愛いから "

さっきの蓮の言葉を思い出す。
ボッ、と顔が熱くなったのを感じた。

『……いやいやいや、』

ないない。
蓮に限って深い意味なんてない。

女子だってみんな、可愛くないものにも「可愛い〜！」って写真撮ったりする。
それと一緒。

ないない。

そう自分に言い聞かせた。

その後蓮とは何事もなく普通に話して、
体育祭も何事もなく進んだ。

強いて言うなら、蓮がリレーで新たなファンを獲得したことくらい。

それ以外は何事もなく終わった。

私の心臓がうるさいのも今だけで、
きっとそのうち何事もなく静まるはず。

そうとも自分に言い聞かせた。