私の "元" 王子様【黒】 (ページ17)

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『亮平く、』
「あ、来てA！」

手を振ろうとした瞬間誰かに手を引かれた。

え、何？誰？って思って振り向くと、

『え、蓮？』
「はやく！抜かれる！」

そう言って私を引っ張って走り出した。

…え、待って待って待って、
何で？

男女が手を繋いでるだけで沸くことが出来る生徒席の人達は大盛り上がり。

でもこっちはそれどころじゃない。

『え、ちょっと待って蓮！』
「えー何！？聞こえない！」
『いや、私以外の人にしてもらわないと！』

歓声で全く私の声が聞こえないのか、どんどんスピードを上げて走っていく。

待て待て待て、速いって。
足の長さが違うんだって。

でもそうじゃない。気にするポイントはそこじゃない。

『私も借り物しないとなんだけど！』

そんな声は届かず、私と蓮はゴールテープを切った。

訳がわからないままこっちですって誘導される。
突然のダッシュの疲労感で文句を言う元気もなく、素直に従った。

マイクを持った委員の先輩が「おめでとうございまーす！」って駆け寄る。

そっか、1位はインタビュー的なのあるのか。

蓮の隣に立たされて、「お題は何でしたか！」って先輩。
すると蓮がマイクを受け取って笑顔で言った。

「〈かわいい人〉、です！」
『…は、』

お題の内容に生徒席が今日で1番の盛り上がりを見せた。

いやいやいや、待って。
は？

ポカンと蓮を見上げる私に、先輩が楽しそうに

「借りられてどうでしたか！」

とマイクを向ける。

…どう、って言われましても。

『…あ、りがとう、ごさいます、？』
「ははっ、ありがとうございますいただきました！
1位おめでとうございます！」

お幸せにーって茶化ながら1位の列に並ばされた。

隣を見ると、「やった！」って嬉しそうな蓮。
パニックになってるのは私だけ。