10 ページ10
私たちだけ時間が止まったみたいだった。
私も康二くんも固まったまま、時計の針の音だけが聞こえる。
少し経って、
「…え、え？待って、(笑)」って康二くんが頬を引き攣らせながら笑った。
「え、今なんて言った？ごめん」
確認のように聞いてくる康二くんに苦しくなる。
…私も本当は言いたくない。
『…ごめん』
「…何が、？」
『…』
「何で謝るん？」
思わず俯くと、泣きそうな顔で覗き込まれた。
優しく頭を撫でられて、目を瞑る。
大きな手。
この手に撫でられることが1番安心できて大好きだった。
顔を上げて康二くんの目を見る。
電気の下だと蜂蜜色じゃない。
『…別れよう、康二くん』
改めて口にしたらもっと苦しくなった。
…嫌だよ、別れたくない。
康二くんの顔ももっと硬くなる。
「…え？(笑)待って、ほんまに何、」
「冗談？」って無理やり笑う姿が悲しい。
私がこんな顔にさせた。
「何それ、全然笑えへん」
『冗談じゃないよ』
「だから笑えへんって」
『本気』
「…」
『ごめん』
「……何で」
『…』
「やっぱ怒ってるん？」
強張っていた顔が崩れていく。
赤くなる目を見ていられなくて、目を伏せた。
『怒ってないよ』
「じゃあ何で」
『…優しいから、』
「…え？」
『優しい康二くんが好きだから』
喋りながら私の視界もにじむ。
私の物が増えたこの部屋も、
この部屋にいる彼も、
この部屋での時間も大好きだった。
だけど、もう。
『私も康二くんみたいに優しくなりたかったんだけど、ダメみたい』
あなたが優しいたびに、どんどん好きになるのに
『…好きなのに、寂しくなる』
あなたを好きでいることが悲しくなる。
そう言うと
「…や、ちょ、待って、」
って髪をぐしゃっとする康二くん。
どんどん目に涙が溜まっていく。
「何でそんな、急に、」
『…』
「全然わからん、」
わからないよね。
だって、あなたにとってその優しさは当たり前だもん。
優しくない私のことなんて、わかるはずかない。
そんなあなたが好きだった。
『……今までありがとう』
「…待って、A、」
『私の荷物全部捨てちゃって大丈夫だから』
「待ってって」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1603人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
noa(プロフ) - 最後翔太くんを選ぶ展開最高です！感動しました！ (2022年10月24日 20時) (
レス) @page40 id: 17a3519150 (このIDを非表示/違反報告)
ぴか(プロフ) - めっちゃ泣きました‼すごいよかったです‼ (2022年10月24日 11時) (レス) @page40 id: 24a776f541 (このIDを非表示/違反報告)
1RNw1b57PQuD3Q9(プロフ) - 胸が苦しくなりながら何回も読み直しました。大好きなお話です。康二君側の視点のお話も読んでみたいです。また素敵な作品待ってます。 (2022年9月23日 22時) (レス) @page40 id: bdaaf2c045 (このIDを非表示/違反報告)
hs.(プロフ) - 期待を裏切る展開が面白く、切なくて、でもそれぞれが真っ直ぐに向き合ってる姿に心打たれました！とても素敵な作品でした。また次回も小説楽しみにしてます！ (2022年9月7日 11時) (レス) id: 37efc71d63 (このIDを非表示/違反報告)
rio66(プロフ) - めっちゃ面白かったです！😭翔太くんが一途で最高だったし、なにより話の展開が面白くて読むのが楽しかったです！😭♡涙腺崩壊してめっちゃ泣きましたァ😭😭 (2022年9月4日 23時) (レス) @page40 id: 1b1cdc44f5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：めい
| 作成日時：2022年8月6日 23時
