ねえ、先生【黄】

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その日の夜から、私は今までで1番勉強した。

私の賭けに先生は「わかった。たくさん助けてもらったし」って承諾してくれた。

土日もほぼ寝ないでぶっ通しで勉強した。
それくらい必死。

学校でもずっと勉強した。
休み時間も、授業中も、ちょっとでも隙間を見つけてはひたすらに英語をやった。


「そんな急にどうしたの」
『木曜の模試受けるから』
「すげぇけどさ。1週間でそんな変わる？」
『変わった気になりたいの』


ふっかの言うことは正しい。
1週間で変わるんだったら、受験生全員合格してる。

でも、これは私の賭けだから。
人生で1番大きな賭けだから。
少しでも勝率を上げたい。ギリギリまで足掻きたい。

ワーク全部解き終わって解答を見る。
前よりも確実にマルの数は増えた。
でも8割にはまだ少し足りない。

あと少し。
あと少しだけ。

そう思ってワークの次のページを開いた。




少しして教室に入ってきた阿部先生。
そっか、次英語だ。

「阿部ちゃん、今日授業岩本先生？」
「そうだよー」

聞いた男子がやったー！って叫んで、「ちょっとお前後で職員室な」って阿部先生が言うとクラス中が笑った。
岩本先生も嬉しそうに笑ってる。

昨日初回だった岩本先生の授業は好評だった。
わかりやすいし、何よりみんな先生が好きだし。

先生も頑張ってる。
だから、私も。

「じゃあ日直、号令お願いします」

阿部先生が言うけど誰も反応しない。

「A、日直」
『え？あ、嘘、ごめん起立』

慌てて勢いよく立ったから後ろの子の机に椅子ガンってぶつけちゃって、その反動で私の膝にも座る部分がぶつかった。

『いった！あ、ごめんぶつけちゃったごめん』
「忙しいなお前」

みんなにクスクス笑われる。
恥ずかしいと思って前を見ると、先生も楽しそうに笑ってた。

「大丈夫？笑」
『ギリギリ。礼、お願いします』

私の号令でみんなと先生が同時に挨拶した。
ガタガタと席につく。
一瞬、先生と目が合った。

「じゃあ昨日の続きから始めます」

指示された教科書のページを開く。
先生の低い声が心地いい。

先生の授業はやっぱりわかりやすかった。



タイムリミットまで、あと3日。

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