検索窓
今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:161,793 hit

39話 ページ39

残暑は去り、空気は乾いて透き通り、グラウンドに射す校舎の影の形も、木立の葉の色合いも真夏とは違っている初秋


どこか弛緩した雰囲気に包まれた空き教室を1年生と蔵野Aで席を陣取っており、何気にこの四人でいるのは初めてでもあった


蔵野Aは無言で本を読んでいた


読んでいる本は朽葉色に日焼けした骨董のような薄い本、その内容は面白いものではないらしく無表情で本をめくっている


そして1年生はああでもこうでもないと話し合っている


「この前喫茶店で飲んだコーヒーがすっごく甘かったのよ」


「入れすぎただけじゃないのか」


伏黒の言葉を否定するように釘崎は続ける


「絶対ありえないわ、角砂糖1個で舌がとろけそうになるなんてありえないでしょ?」


「甘すぎるコーヒーか」


「俺にはわかんねーや、蔵野先輩はどう思う?」


『あ、はい』


無表情で本を読んでいた蔵野Aが、驚くように顔を上げる


『……すみません、なんの話でしたっけ?』


結構な声のトーンで1年生は話していたが蔵野Aには全く聞こえていなかったらしい


いつも話をよく聞いてくれるはずの人が今日に限って話を全く聞いていないことに不思議と思い1年生は心配の目を向ける


「蔵野先輩、休んだほうがいいですよ」


『えっ?』


「目の下の隈酷いわよ」


「休んだほうがいいな」


伏黒に続き虎杖、釘崎までもが休んだほうがいいと言う


『そこまで言うなら今日はここで失礼しますね、話はまた今度ちゃんと聞くので』


蔵野Aは読んでいた本を閉じ立ち上がる


「蔵野先輩またな!」


「お大事に」


「じゃあね、Aさん」


蔵野Aがいなくなり静まり返る空き教室


「なんかあったんかな?」


「深入りしないほうがいいぞ」


「……そうだなー」


「…そうね」

40話→←38話



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (112 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
279人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:黒猫 | 作成日時:2020年10月29日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。