28話 ページ28
いつものようにリビングに移動してソファに座る
ソファに座るとマグカップを片手に兄さんは声をかけてきた
「A、お疲れ様」
『ありがとう兄さん』
いつもと同じパターンのやりとりを再現していく
「学校は楽しかった?」
『うん、楽しかったよ』
兄さんが嬉しいような笑みを浮かべる姿は何百回と見てきた
「千思万考」は自分の呪力でいくつもの種類の武器が生成可能で、ただし見たことがある物でないと作れない私の術式
自分の意識の蔵の中に武器と言う名の思い出の部屋を作り兄と言う名の武器を作った、それに複雑な命令式を組み込めばいいだけ
何百回と繰り返される虚像の日常
人は何かに依存しなければ生きていけない生き物で、家族に依存し、恋人に依存し、友人に依存し、社会に依存し、世界に依存する
私が依存する、虚像の日常、虚像の兄にどれだけ今まで助けられただろうか
今まで依存し続けてきて、このままでいいとは思っていない
「…A、五条くんが待ってるよ」
組み込んだことのない兄の言葉
意識の中だから私の都合のいい妄想なのかもしれない
『兄さん…私…もうここには来ないようにするね。天国のお父さんとお母さんも心配するだろうし、それにほんとの兄さんだって…』
意識の蔵の外に繋がるドアノブを握る
その手を兄さんは上から握ってドアノブを回した
視界がぼやける
「…いってらっしゃい」
遠のいていく意識の中、最後に兄さんは何かを言っていた気がした
─────「僕はAの心の中にいるから」
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作者名:黒猫 | 作成日時:2020年10月29日 17時