宮侑にたたかれまして【宮侑】 (ページ9)

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8話ページ9

「では文化祭の出し物ですがー」

ほおづえをついて窓からの風に揺れるカーテンの動きを目で追いながら、学級委員の言葉に耳を傾ける

私はふと昨日のことを思い出した
あの後私は少し自分の発言に恥ずかしくなり「それじゃあ」とだけ言い教室に戻ってきてしまったのだ。なので今度会ったら謝ろう

「やっぱ花形はお化け屋敷やろ」

「だよなー」

男子達の盛りがっている声で再び学級委員の言葉に耳を傾ける

稲荷崎の文化祭は、六月の上旬という他とはズレた時期に行う

特に異論がなく、その後すんなりとお化け屋敷に決定。エリザベート・バートリ通称「血の伯爵夫人」がモチーフの幽霊館だ

私は手芸部で、文化祭展示用に好きな物をひとつ作ることになっている

滞りなく、エリザベート役の女子2人。男の召使い4人。殺された令嬢役の女子6人が決まった

学級委員が演劇部のこともあり、設定には力を入れるらしい。それで雰囲気をつくるために手芸部の私がエリザベートと令嬢のドレスを作ることになってしまった

放課後、どんより気分で結衣と廊下を歩く

『学級委員の笹原さんにドレス頼まれた…これ期待されてるよね…デザイン考えなきゃ…』

ドレスのデザインに生地選びから縫製までやらなくてはいけない。手芸部の展示物もつくらなくてはいけないのに仕事が増えてしまった

「よしよし」

結衣が私の頭を撫でる

すると知らない女子生徒がこちらに走ってくると思ったら、勢いよく私の手を握ってきた

「あの！3組の仙一さんですよね？！」

『そうですけど…』

「私2組の佐倉いいます！仙一さんに衣装作ってほしいんです！」

ぎゅーっと手を握られ、すごいキラキラした目でみられる

『えっと…』

「お願いします！仙一さんしかいないんです！」

よりいっそうキラキラした目でみてくる

『わ、わかりました』

押しの強さに負け承諾してしまった

佐倉さんは「ありがとうございます」とだけ言い笑顔で帰っていった

『また仕事が増えた…』

「よしよし」

また結衣が私の頭を撫でる