覆水盆に返らず ページ29
『ゾムはな、寂しがり屋なんよ。すぐわかったわ』
「さすがやな。あのまま腐ってたらオレ、Aへの依存やばかったやろな」
『あの時も可愛かったけどね』
「……ま、感謝しとるで。ありがとう。Aのおかげで毎日楽しいわ」
『そんな大げさやな、ゾムが頑張った結果が今やん。もっと自信持って』
いつもより近い星空と、綺麗な夜景。横にいるクラスメイトは、もうあの空き地にいた問題児ではない。
本当はあの時、アキラくんとニッシーに会わせるのを迷っとった。会えば絶対上手くいくってわかってたから余計に。……家から逃げた先の空き地でゾムと出会えて、ホンマに楽しかったから、あの時間が無くなるのは寂しかった。あそこでずっとゾムのギターを聞いて、笑っていたかった。でも、ゾムが学校で一人なのを知っちゃったんよ。つまらなそうに廊下を歩いているのを見て、私じゃダメなんだって思った。だから、私はゾムの幸せを願ったんや。
「……さすがに寒いな、そろそろ寝るか」
『そやね』
おやすみ、とお互い言い合ってエミ先生のベッドへ潜る。さすがに寝なきゃ。明日は、きっと長い。
目を閉じると色々なことを考えてしまう。こうやって眠ることも久しぶりやし、こんなに穏やかな気持ちになるのも久しぶりや。家で眠る時はもっと、嫌な気持ちを抱えてた。あの気持ち悪いベッドで眠るしかなかった。
永遠と逃げ続けることしか出来ないと諦め、全部から目を反らしていた毎日を救ってくれた人たちがいる。そう思うだけで涙が出てくる。ありがとうな、みんな。
*
「……おい、そろそろ起きろ」
『……んえ？ふぁーあ』
「おは……寝るな寝るな、夢じゃないぞ」
『おにいちゃ……？あれ、ここどこ？』
「エミ先生の家だ、そろそろ起きた方がいい」
目蓋を開くとグルッペンお兄ちゃんの顔が近くにあって、私は小綺麗なベッドに寝ていた。夢かと思ってもう一度目を閉じると、お兄ちゃんに頬っぺたをつねられて意識が覚醒する。そうだ、先生の家に泊まったんや。
「まさか、この年で寝起きのお前が見られるとはな、これからは毎朝起こしてやってもいいぞ」
「変なこと言ってんちゃうぞ、はよ支度せえ……A、おはよう」
『おはようトントン、もうそんな時間？』
「エミ先生が学校寄りたいらしいから早めに出発するで」
『はーい……お兄ちゃん、頭撫でるのやめて』
「子供の頃が懐かしいな」
『もう！やめてってば！』
。
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人妻すここ(プロフ) - 魔王さん» コメントありがとうございます、最高という言葉をいただけてとても嬉しいです、こちらこそ最後まで読んでくださってありがとうございました！ (2021年3月26日 5時) (
レス) id: 89365ba13c (このIDを非表示/違反報告)
魔王(プロフ) - 一気に読んでしまいました！！正直最高過ぎて最後泣いてしまいました！！素敵な作品をありがとうございます！！ (2021年2月20日 22時) (レス) id: 647071a1ea (このIDを非表示/違反報告)
人妻すここ(プロフ) - 都築さん» ありがとうございます、その言葉がとても嬉しいです。ゾンビももう少しで二章が始まるので少々お待ちください…！コメントありがとうございました。 (2020年7月29日 6時) (レス) id: 89365ba13c (このIDを非表示/違反報告)
人妻すここ(プロフ) - 猫目さん» 一気読みしていただいてありがとうございます。結構重苦しくて万人受けしないので大好きと言っていただけて安心しました。コメントありがとうございます。 (2020年7月29日 6時) (レス) id: 89365ba13c (このIDを非表示/違反報告)
人妻すここ(プロフ) - 矩華さん» 一気読みありがとうございます。番外編は考えていなかったんですが、コメントいただいて面白そうだと思ったのでいつか書きます！その時はまた読んでいただけると嬉しいです。コメントありがとうございました。 (2020年7月29日 6時) (レス) id: 89365ba13c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すこ | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/home
作成日時：2020年4月1日 15時
