彼氏様×彼女様 *短編集【名前変換オリジナル】

Happy valentine* ページ22

「…私のプリン食べた？」


『…食ってない』




小さな丸いテーブルを挟んで

向かい合って座る



テーブルには

プリンの残骸

もとい、中身の無いプリンのカップ




「…じゃケーキ貰う」


『ばかっ、俺のだっつの！』


「なら、プリンを返せっ」




事件発生は30分前

冷蔵庫を開けたら

私のプリンが無くなっていた




『…たかがプリンじゃん』


「たかがプリン、されどプリン」


『はいはい』




面倒そうに、立ち上がる秋

ジャージを羽織って玄関へ向かってる




「待っ、どこ行くの？」


『は？買いに行かないの、プリン』


「い、行くよ」




やった、プリンだ！

急いでパーカーを来て手袋を持つ




『…手袋は、置いてけよ』


「何で？だって夜だし、寒い」


『いいから、置いてって？』


「…はーい」




なんだかよく分からないけど

ぽーんと手袋を玄関に置く



さすが2月の夜

玄関から一歩出れば、吐く息が真っ白に変わる


両手に息を吹きかけると

じわんと温かい




『…ん』


「んっ！？」




秋に、いきなり右手を差し出されて吃驚する


訳も分からず自分の左手を差し出すと

ぎゅっと手を握られ、

それは秋のジャージのポケットの中につっこまれた




「…秋さん、今日は甘えんぼですね？」


『煩い』




空いてる左手で、頬を引っ張られる




「い、いひゃい」


『ざまーみろ』




そう言いながら、口角を上げる秋

…鬼畜めっ、楽しんでやがる！




目的のコンビニに着くと

外で待っているよう指示される




「…私は犬か？このやろー」




心の中で呟いたはずの言葉は

するりと口から抜け出ていて



ちょっと寂しくなってきて

パーカーのフードをかぶった




『…A、何やってんの』




コンビニ袋を手に提げた秋に

尋ねられる




「…別に」




寂しかった、なんて言えるはずなくて

ぶっきら棒な返事しかできなかった




『寂しかったんでちゅね、お子ちゃま』


「ち、違うっ」


『素直じゃない子にはあげませんよ？』


「い、意地悪！」




ふん、と拗ねると

目の前に袋が差し出される


中身は

プリンとチョコレート




『Happy valentine』




流暢な英語の発音に顔を上げると

突然重ねられた私の唇と秋のそれ




『ま、プリンのついでだけどね』


「あ、ありがと」


『あとは？』


「好き、大好き秋」




勢いよく言った台詞に

彼は悪戯に笑った




『…知ってる』

White day*→←意地悪

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す