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吉原×手越 ページ16

A「手越様。来てくださったんですね。」

そう言いながら、私はお店の入り口まで手越様を迎えに行く。


祐「ごめん。なかなか来れなくって。」

A「ふふっ。嬉しい。」

祐「今日の予定は?」

A「特にありませんよ。手越様が来てくださって良かった。」

私がそう言うと、手越様は女将さんに「Aの一晩、もらいます」と言ってお代を払った。


部屋に入ると、そこから私達の恋人ごっこが始まる。


祐「久しぶりだけど、元気だった?」

A「元気な訳ないじゃないですか。手越様に会えなかったんですもの…。」

祐「ほんとに?」

A「じゃあ、確かめてみてくださいます?」


着物からそっと肩を肌けさせると、手越様はそっとそこに唇を寄せてきた。


柔らかな感触と温かい温もり。


手越様は帯に手をかけると、ゆっくりと結び目を解いてく。


少しずつ露わになる身体が、薄暗い部屋で蝋燭の火に照らされ

私達の後ろにゆらゆらと影を作る。


ここは高い塀に囲まれた場所で、逃げる事なんて許されない所。


好きでここに来た訳じゃない。

だけど、生きるために私は今日もたくさんの嘘をつくんだ。



A「あっ・・あっ・・。」

そんな甘い声で鳴いて、悲しいくらいに感じた振りをする私。



そのまま揺れる手越様の背中にそっと手を回せば、「A」と優しい声が降ってきた。



どうか私をこの鳥かごから連れ出してはくれないだろうか…。


その優しい声に、ついそう願ってしまう。




だけど、そんな願いも儚く散って…


朝日が昇れば、「またね」と言って、いつも通りの笑顔で見送るんだ。




祐「A。」

A「はい?」

祐「また来るから。」

A「はい。お待ちしてます。」



祐「時間はかかるかもしれないけど、俺がAを籠の外に連れて行ってあげるから。」


手越様はそう言うと、朝日を浴びながらゆっくりと歩いてく。


その後ろ姿を見ながら、不意に私の頬には涙が伝った。



嘘かもしれない。

本当だとしても叶わないかもしれない。



A「……っ。」


なのに、涙が溢れて止まらないのは…


それが、ここに来て初めてもらった希望の言葉だったから。

彼とのある一日〜手越〜→←エイプリルフール×増田



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めぐみるく(プロフ) - さっちゃんさん» やっぱり分かっちゃいますよね(笑)ありがとうございます♪更新、頑張ります((´∀`*)) (2015年5月13日 0時) (レス) id: be63dacdc0 (このIDを非表示/違反報告)
さっちゃん - めぐみるくさん» やっぱり!なんか知ってる気がしたんです笑笑 更新頑張ってくださいね(o^^o) (2015年5月13日 0時) (レス) id: a213e68ec1 (このIDを非表示/違反報告)
めぐみるく(プロフ) - ひなちさん» ほんとですか?!曲流れました?(*´∀`*)私も吉原ラメント大好きです♪ (2015年5月12日 23時) (レス) id: be63dacdc0 (このIDを非表示/違反報告)
ひなち(プロフ) - 吉原ラメント好きー\(^o^)/読みながら、曲流れた♪ (2015年5月12日 23時) (レス) id: 59cdcfdd85 (このIDを非表示/違反報告)
めぐみるく(プロフ) - さっちゃんさん» そうです。それを元に書かせていただきました(*´∀`*) (2015年5月12日 7時) (レス) id: be63dacdc0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:めぐみるく | 作成日時:2015年2月8日 2時

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