girassol (ページ16)

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-N-

移動する車の中であの人が

「俺、紫陽花好きだなぁ」

って突然言い出した。

「どうしたのよ、突然……あぁ」

手にしていた雑誌から顔を上げると、相葉さんは赤信号で止まってた車の窓から外を見ていた。
その目線の先には
色鮮やかな紫陽花が集団でソコに存在していた。

俺は別に梅雨は嫌いじゃない。
元から超が付くほどのインドア派だし、雨が降ってるとテレビを付けなくても程よく音が部屋に入ってきて、むしろ好きの部類に入るくらいだと思う
思いっきり梅雨生まれだし。

まぁ、でも相葉さんの笑顔が映えるのはやっぱり青空の下だと思うから早く梅雨は終わって欲しいな、とも思うよ
冬生まれのクセに夏がよく似合うヤツですから

「花なんて興味なさそうなのに、どうしたんですか急に。花屋さんの役でも来たの？」

なんて茶化すと、窓の外を見てた相葉さんはくるっと俺の方を向いた

「うぅん！違うよ！なんか、にのっぽいなって思ってさ」

ふざけて言ってんのかと思ったけど
…昔から一緒にいるからわかる。
大真面目に言ってるよコイツ…

「そうかなぁ。
全然俺っぽくなくない⁇俺、あんなに可憐じゃないですけど？」

って言えば、真顔で

「え？可愛いよ？」なんて言ってくるから対応に困る
絶対顔赤いよ今…

「紫陽花って、土によって色が変わるんだって、知ってた？」

特に何も言わないで目を見て続きを促す

「にのちゃんさー、俺らと一緒に仕事してる時とか芝居してる時とか、
まぁ、意識してないんだろうけど
…んー、なんて言えばいいんだろ。その現場っていう土によっていろんな色に変わるじゃん？
そこがオマエに似てるトコロ、で、俺の好きなトコロ」

…好きなトコロってそう言う顔しながら言うもんじゃねぇだろ
笑ってるけどちょっと寂しそうじゃんか

「あのなぁ…」言い返してやろうとしたら現場に着いちゃって

「今日は一緒の仕事だね！俺嬉しい！」

先に降りた相葉さんがコッチを振り向いて満面の笑顔で手を差し出すから…

確かに今日は久しぶりの2人での仕事、嬉しくないワケない。
その手を掴んで少し引き寄せる

俺と相葉さんは少し身長差があるから、近くなると俺が見上げる感じになる
見上げる先にはさっきとは違って少し驚いた顔がある

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