奇蹟 (ページ23)

今日:1 hit、昨日:6 hit、合計:75,002 hit

第22話ページ23

「......なんで、とも、何もたべられへんの？」

青白い顔で泣きながらそう訴えるともに俺は何と声をかければええか分からんかった。

心不全を表す数値はグングン上がっていき、基準値の何倍にもなっとるし、明らかに悪化傾向であるのは誰の目から見ても明らかやった。

顔色は透き通るように白く、心臓のポンプ機能が落ちて、上手く末梢に血液が行き渡らんせいで手足の末梢は気の毒なほど冷たい。

「とも、大丈夫やからなぁ」

俺はともの小さな手をさすって少しでもあったまるようにつとめた。

貧血傾向も強くて輸血を行いたいこと、心機能の低下が著しく、強心剤などの薬剤の量を増やしたいことを濵田先生から説明され、同意書にサインをした。

「...ともくんの体に上手く薬が効いてくれない状態です。薬を変えたり、量を調整しながら様子を見ていきましょう」

体はしんどい、食べられない、家に帰れない、兄弟に会えない、学校に行けるかどうかという不安やストレスが積み重なり、ともは少し不安定になってきとった。

「何で吐いちゃうの、何で元気になられへんの？！」

吐きながら泣いたり、俺たちに当たったり、物に当たったり、感情のコントロールが少し難しくなっとった。

でもそれは当然の感情で、俺たちは咎めることは出来へんし、宥めるしかなかった。

せやけど、興奮したり、泣いたりすることはともの心臓には大きな負担になるんや。