机の上、君へ伝言

９、《走れ、体育祭》 ページ10

・向井目線





あれから毎回伝言を交わし、とうとうやって来た体育祭



俺は自分が出る競技とか委員会の仕事がなければ、写真部として競技中の写真を撮る






　




ただ今、絶賛玉入れ中






　



そう、玉入れには目黒くんが出場しとるんや！！






高身長と気合で、めちゃくちゃ活躍しとる


心なしか、玉が喜んで籠に入りに行っとるようにも見えるで








そんなシャッターチャンスを逃さんために、カメラを向けて目黒くんの行動を追う



全てがカッコ良すぎて、ほぼ連写しとるけど笑









『…よしっ、撮れたな』





目黒くんの出番は終わってしまったが、そのまま自然とレンズを向けて追いかけてまうと








　









「なんか、話しとる」






隣におる女の子が話しかけ、目黒くんと楽しそうに喋り始めた



ええな、俺も女の子になりたいわ








せやけど、目黒くんが今気になっとるのは俺







　





いや、ちゃうな




俺であり、俺でない









伝言の子









話し方も字も変えて



知らない俺になりきる








　








『もう、嫌や…』





楽しかったはずの気持ちは落ち込んで、カメラも視線も下を向く








こんな汚れたレンズ



君に向けたくなかった







　







「なーに、目黒くん撮ってんの？」


『うおおおっ！？ふっかさん！？』






萎んでる俺の隣に頭をタオルで覆ったふっかさんが現れた



おい日本男児、日焼けを恐れるんやないよ！








『なんや、顔デカすぎてテントから追い出されたん？』


「ちげーよ！テントに熱い男いるから避難してきた」


『あー、照兄か』


「俺みたいに動きたくない勢は存在消されるから」






そやな、委員会でも熱々やもんな





せやけど、さすがに恋人のふっかさんには優しいやろ


鬼の体育委員長が唯一デレデレになる相手って、よう噂されとるで









「そういえば康二、ちゃんと水分摂ってるか？」


『おう、始まる前にクラスのテントで飲んだ』


「あほ、去年のこともあるんだから持ち歩け」


『ほーい』








こんな感じでなんだかんだ話してると、玉入れは終わってしもうた



当然のことやけど、グランドを見ても目黒くんはいない







　




『ほな、そろそろ綱準備行こかな』


「あ、翔太なら舘さんとサボってるよ」


『摘み出してくるわ』


「がんば」









ホンマはちゃんと応援したかったな




なんて少し後悔しながら走った

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