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9…篤人side ページ9

階段から降りてきてリビングに向かう俺の耳に入ってきたAの声に足を止めた。


「大事な人を失うのが怖い…。」




Aを会わせた時の母さんの嬉しそうな様子からして、俺の家に何度か訪れているのではないか……。

そんな気はしていた。

Aは過去に怯えながら生きているのではないか、と

あの一言を聞いてそんな考えが頭によぎった。




「つか、客のAがキッチンで料理してるってどうなの?」


あのあと、素知らぬままリビングに戻った俺

母さんとAがキッチンで楽しそうに料理をしてるのを眺めながら父さんと話をしていた。

「彼女は家に来ると毎回ああして母さんと料理をしてたからな。懐かしい光景だよ。」

「そうなの?」

「俺の教え子といつも一緒に顔を出してくれてね、料理してるのをあいつとこんなふうに会話しながら眺めてたな。」

「へぇ……」

「まさかお前がAちゃんを連れてくるとはね。いつの間に知り合ったんだ?」

「あぁー………。彼女さ……晴くんの大学の先輩なんだよね。サッカー部で一緒だった」

そういうと父さんは驚いた表情で

「高梨くんと連絡ついたのか?」

「………」

すごく言いづらかった。

父さんも母さんも、俺が晴くんを探していたことは知っていて

何回か会ったこともあるし……。


「篤人………?」

「……それがさ、晴くん…亡くなってた……。癌だったんだって。最期を看取ったのがAだったんだ……」

「……そうか……そうだったのか……だからさっき………」

父さんは小さくつぶやいた。

「残酷だな……ほんとに」

「…………父さんは……Aの過去を知ってるの?」

俺の問いかけには答えてくれなかった。

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作者名:めぐ | 作成日時:2015年7月1日 23時

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