3…篤人side ページ3
「2011年3月18日、6時33分。」
「え?」
「晴くんが息を引き取った時刻だよ」
全てを話し終わった彼女は、小さく溜息をはいた。
温かかったはずのコーヒーはすっかり冷たくなってた。
「震災の日からの記憶が曖昧って…」
「地震の時一緒にいたはずなのに……その後のことを思い出そうとすると、……頭がズキズキしてきて…息が苦しくなる。過呼吸っていうのかな……。」
彼女から語られた真実は
俺が思っていたよりもずっと重くて
残酷だった。
「ごめんなさい、肝心な部分の記憶がなくて。今の私が話せるのはこれが全部……。今まで本当にごめんなさい。」
頭を下げたまま、動かないA。
正直、なんて言葉をかけたらいいのかわからなかった。
黙ったままの俺の前に小包が置かれた。
「生前………、晴くんが亮に頼んでいたみたい。篤人くんに渡してほしいって」
「俺に……?」
何が入っているんだろう。
晴くんが俺に遺してくれたもの。
「あの日、どうして私は一緒にいなかったんだろう。あの日、晴のそばから離れなかったら………きっと……もっと長く生きられた……」
「晴くんを……死なせてしまったのは、私なの…。ごめんなさい……ごめんなさい…」
呟くように何度も何度も謝り続ける彼女に、声をかけようにも、情けないことにうまく言葉が出てこなかった。
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作者名:めぐ | 作成日時:2015年7月1日 23時