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「もう後半戦か」
現在、ハーフタイム中だ。
観客として見ていてもあっという間に過ぎていったという感覚だった。
今俺は座っていた観客席から離れ、フィールドを一望できる場所に立っていた。
「……”ルナインパクト”。月の光か」
まるでAが王帝月ノ宮に染まったような技でどこかモヤモヤする。……月は自ら発光していないから、偽りの光と表現できる。まるで今の彼奴が別人だって言っている様にも取れる。
……これは俺の考えすぎなのかな。
「……！」
ポケットに入っていた携帯が震える。画面を見ればとある人物から通知が来ていた。
”会場にいますか？”
俺はその通知に対して会場にいる旨を返信する。すると今度はこんな内容が送られてきた。
”試合後、この場所に”
そのメッセージと共に送られてきた住所と建物の名前。……意外と近いんだね。
「この試合が終わった後が勝負か」
それは誰に対する言葉なのか。なんて他人事の様な言葉が頭に浮かぶ。
俺にメッセージを送った人物に対して言った言葉じゃない。この言葉は俺自身に向けた言葉だ。
「お願いだから無理しないでくれよ」
初めて会った時から何となく顔色が悪いような気がしていた。まさかあんな大きな秘密を隠していたなんて……それも、あの状態なら重症であるのは間違いない。
あそこまで自分に無頓着で、自己犠牲が強い人初めて見た。そもそも見る事などあるのだろうか。
「君は俺と彼奴を再び引き合わせてくれた”ヒーロー”なんだから」
フィールドを見下ろした俺が目線を向けたのは、王帝月ノ宮のベンチだ。キャプテンである野坂君の前に彼が率いる王帝月ノ宮イレブンが立っている。その中にはAも当然いた。
「あ、いた！」
「どこいってたんだよ」
「ん？ あぁ、ごめん。高いところからフィールドを見たくてさ」
「豪炎寺さんが心配してたよ。早く席に戻ろう？」
「心配掛けてごめんよ」
「自覚あるならさっさと戻って来いってんだよ」
どうやら1人の時間はこれで終わりのようだ。
タツヤとヒロトに連れられ、俺は元の席へと導かれた。
「悠さんいましたよ！」
「どこに行ってたんですか？」
「フィールドを一望したくてちょっと高いところに」
「突然いなくなってて心配しました」
「ごめんごめん」
俺が戻って来た事に気づいた豪炎寺君達が出迎えてくれた。元々座っていた席に座ると、ホイッスルが鳴り響いた。……後半戦の始まりだ。
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作者名：恵野 | 作成日時：2022年8月11日 13時
