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「確かにその通りです。元々僕が証拠となるデータを集めていたのは、アレスを潰す為ではなく、真実を確かめるため。アレスは世界に光をもたらすのかどうか」
長い時間アレスについて情報を集め続けてきた。その中で出会った宮野茜さんの協力の下、作業は当初思っていたものより早く進んだ。
……お陰で彼女について調べる時間も作れたからね。
アレスについて情報を集め調べた結果、僕が出した結論はこうだ。
「……残念ながらアレスは諸刃の剣だった。アレスは効率的に人の精神と身体の能力を上げる代わりに、人の身体を蝕む副作用がある。これは決定的なシステムの欠陥だ！」
「そんな事を誰が信じる？ 世論などどうとでもなると言っただろう？」
「証拠ならある。……決定的な証拠がね」
それも二つだ。
貴方が無理矢理隠し続けたものと、僕がずっと隠し続けたもの……その二つがアレスシステムの欠陥を裏付ける証拠だ！
「ふははははははっ！！ 一体どこにそんなものある！？」
「それは＿＿＿
そう言って僕が自分の頭を指指せば、目の前の男は高笑いをやめた。……いや、やめざるを得ないだろう。
「僕の頭の中にできた腫瘍は、アレスシステムで使用される薬 物によるものです。僕はこの腫瘍を摘出せず、アレスとの関連を調べて貰っていました。この僕の頭にある腫瘍こそ、アレスを潰す”生きた証拠”だ！」
「……！」
「そして、この自体が明るみになれば彼女を手放さざるを得なくなる。彼女がアレスシステムによって変わってしまったと世間に広まるまで、そう時間はかからないでしょう」
彼女を目の前の男から解放させることは、アレスを潰すこと。それしか彼女を救う方法はなかったのだ。
「命を賭けてこの私を陥れようというのか」
「さすがに手術ができる限界が残り三ヶ月と言われ、少し焦りましたけどね」
「！！ 貴様あああああああッ！！」
男が僕につかみかかった……その瞬間だった。
「ふっ！！！」
部屋の出入り口の扉が大きな音を立てて開く。そこから灰崎君が現れ、ボールをまっすぐ男へ向かって蹴った。
その威力は今まで彼が抱えてきたアレスに対する憎しみが篭もっている。受けて当然のボールだ。
その存在に気づいた男は僕から手を離し、ボールへ視線を移した瞬間だった。
「……え？」
男とボールの間に割り込んだ影。それは僕の隣を横切った。
「……かはっ」
テーブルに衝突し、背中を打ち付け倒れた人物に目を移す。
……どうして、
「どうして庇ったんだ＿＿＿A！！！」
お腹を押さえ蹲る彼女に僕はそう叫んでいた。
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作者名：恵野 | 作成日時：2022年8月11日 13時
