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王帝月ノ宮のゴールキーパーがボールを投げた。カウンター攻撃が来る！
向こうが投げたボールの先にはAさん。野坂に渡ったら、またあの必殺技が来る！
「！ 氷浦ッ」
「攻撃なんてさせない！」
「奪わせないッ」
同時にボールへ向かって飛ぶ。その高さはほぼ同じだったが……
「！！」
「貰うよ、Aさんッ！」
僅かに俺が先だった。いや、もしかしたら体格差だったかもしれない。
「明日人！！」
ボールをAさんから離すため、明日人へと素早くパスを回した。ボールは誰にも妨害されることなく明日人へと繋がった。
「こっちだ！ 明日人ーーーッ！！」
ボールが渡った直後、明日人を呼ぶ剛陣先輩の声が聞こえた。しかし、俺はAさんをマークする事に集中しなければならない。その役割を俺がやると自分から申し出たのだから、最後までその仕事をやる。
「っ、通して……ッ」
「通さない、行かせない……！」
熱くなっているのか、いつもの敬語口調が外れている。初めて聞いたはずなのに、何故かしっくり来るのはなぜだろう。
「剛陣先輩！」
明日人が剛陣先輩へとパスを出した。そのボールは剛陣先輩へ繋がった。
「俺だってやれる……ずっと特訓してきたんだ……！」
「俺が決める、渡せ！」
ゴールへ走る剛陣先輩の隣へ着いたのは小僧丸だ。小僧丸の事だ、俺が点を奪うと言っているんだろう。
剛陣先輩には悪いが、今ここで得点を奪える可能性があるのは小僧丸だけだ。俺のシュートは偶然か重なって入った所謂”まぐれ”だ。あまり良いものではなかったまぐれだったけれど。
だから小僧丸にボールを預けるのが正解だと思う。
「小僧丸！ ……もう一遍だけ俺に打たせてくれ！」
「はぁ！？」
しかし剛陣先輩から小僧丸に渡す素振りがみえない。……またシュートを打つつもりなのか？
けれど、ここまで譲らない剛陣先輩は珍しい。……何か策があるのかもしれない。俺達が知らない剛陣先輩の策が。
だったら俺はそれを信じるだけだ。剛陣先輩に降りかかるかもしれない脅威を少しでも減らすこと。即ち、ここで俺はAさんを止め続けることだ。
「二人とも、前！！」
ふと、明日人の声が聞こえた。見上げた先に映ったのは、野坂にボールを奪われた所だった。まさかここまで上がってきていたとは！
……そっか、俺がここでAさんを止めているから中盤の防御が少し脆くなっているのか。だから上がってきたって所か？
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作者名：恵野 | 作成日時：2022年8月11日 13時
