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「A！」
ゆうまの声が聞こえた瞬間、自分の身体が何かに包まれた感覚がした。刹那、身体が地面へ倒れ込む音と、続けてホイッスルが鳴り響いた。
何が起こったのか分からない。目の前が真っ暗だ。……けれど温かい。その温もりに浸っていると頭上から声が聞こえた。
「大丈夫かい、A」
見上げれば至近距離にあるゆうまの顔。……もしかして、地面に倒れる瞬間に感じた包まれた感覚……あれはゆうま？
状況が把握できないまま、目の前の問いに対し頷いて答えた。自分はなんとも無いという意味を込めて。
「Aさ……！ ……野坂」
なんでゆうまがこんなことをしたのか分からない。そう思っていると別の声が聞こえた。その声の主は氷浦貴利名だった。
「大丈夫だよ、氷浦君。君のシュートには僕達当たってないから」
「それは良かった……けど、どうして避けなかったんだ」
ゆうまと氷浦貴利名の会話を黙って聞いていると、自分の前に影か掛かった。……靴と靴下のデザインで分かった。自分の目の前にいるのは氷浦貴利名だ。
どうやら自分と目線を合わせるように屈んでいるらしい。……分かっているのに、何故か顔を上げることができない。
そして、彼の問いかけに対する明確な答えが出てこなかった。だから黙り込んでいると、上から大きな声が降ってきた。
「野坂が飛び込んでくれなかったら怪我していたんだよ！？」
それは氷浦貴利名が自分に向けてぶつけてきた言葉だった。……その言葉に何故か心が温かくなったのは気のせい？
「……ごめん、なさい。頭が上手く動かなくて、何が正しいのか分からなくなって」
何が正解なのか、纏まっていない状態で言葉にしたからなのか、自分でも何を言ったのか分からない。
……だから、氷浦貴利名がどんな回答をしてくるのか予想もできない。そう思っていた時だった。
「俺が話したことが松山さんの邪魔になってるんだね」
「！」
氷浦貴利名が放った言葉が耳に入った瞬間、心臓がドクンッと大きく脈打った。
「……君が言ったとおり、忘れるべきだったのかな」
”……氷浦。もし、自分が貴方のことを忘れてしまったら＿＿＿その時は貴方も、自分の事を忘れてください”
あ、れ……？
この言葉、言った記憶がないはずなのにどうして鮮明に思い出せる……？
「もう話はしないから。……さっきまで俺が話したこと全部忘れて」
”嫌だ”
「！！」
氷浦貴利名が放った言葉に対し自分はその言葉が浮かんだ。ありふれた言葉なはずなのに、どうして
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作者名：恵野 | 作成日時：2022年8月11日 13時
