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「今日は何処との試合を見るの？」
「雷門と帝国学園だよ」
現在、僕達は帝国学園にいた。
今日の試合は雷門と帝国学園の試合だ。彼女にとっても馴染みあるものだろう。
調べたところ、練習試合ではあるが雷門と初めて試合をした学校は帝国学園らしい。
それに、去年の夏に開催されたFFでも雷門と帝国学園は試合をしている。
その時彼女は正式にサッカー界へと帰ってきていた訳ではないが、知っているはずだ。
「……てい、こく」
「何か思う事でもあったのかい？」
「……いや、気のせいだと思う」
「気のせいでもいいよ。何を感じたのか教えて欲しいな」
Aは光のない瞳で僕を見上げた。心なしか、日に日に彼女の声に抑揚がなくなってきたような気がする。
「帝国学園についてはデータを与えられたから知っている。なのに……」
「なのに？」
「
「！」
前から知っている気がする、ね。気のせいではないと言いたいけど、今の彼女にそれは理解できない。話しても意味がない。
「……そっか」
スポンサー企業のCMが流れる中、両チーム試合に向けて準備を進めている。
「影山監督が復帰してから、これまで練習試合は全て非公開。しかも対戦相手はそれ以降、必ず調子を崩しています」
「……帝国学園監督、影山零冶。侮れないよ？ 汚れた英雄と言った所かな」
長い足を組んでベンチに存在する影山監督。
対する雷門の監督、超金雲は携帯を握ってゲームをしているようだ。
「底知れない実力を秘める二人の監督……この試合、面白くなりそうだね」
チラッとAを見下ろすと、フィールドをジッと見つめていた。
端から見れば試合が始まるのを待っているように、知る人物からすればいつも通りに捉えられるこの光景。
しかし、僕にはAが不安そうにしているように見えた。
彼女と過ごす時間を増やしたことで、変わる事の無い表情でも彼女がどう思っているのかが分かるようになってきた。
今の彼女に感情はない。だが、完全になくなっている訳ではないと思っている。
そうでなきゃ、あのような反応……突然頭痛に襲われるような事はないと思うんだ。
あの頭痛は彼女のSOSだと僕は考えている。しかし、何に対するSOSなのかはまだ分からない。
そして……なぜ王帝月ノ宮に転入してきたのかも。
「焦らなくてもピースは日に日に埋まってきている」
でも重要なピースはまだ見つからない。一体そのピースはどこにあるんだろうか。
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作者名：恵野 | 作成日時：2021年6月6日 0時
