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後半戦開始
星章学園はハーフタイム中、何か揉めていたみたいだ。
灰崎君はまだ自分がGKに置かれた意味を理解していないみたいだね。
これはAがその配置の意味に気づくのが先か、灰崎君が気づくのが先か。勝手に勝負にしちゃおう。
「……悠馬、灰崎凌兵がゴールを離れたよ」
「そうだね」
「あれじゃあ点を上げているようなものだよ？」
我慢ができなくなったのか、灰崎君がゴールを離れた。三兄弟の一人からボールを奪うと、灰崎君はたった一人で攻め上がっていく。
誰にも頼らない、一人だけのサッカーだ。
「……灰崎凌兵は本当のサッカーを知らない」
「じゃあAにとって本当のサッカーは何だい？」
Aがこちらをゆっくりと振り返る。
光を失った瞳がこちらを見上げ、小さな口が開いた。
「サッカーは11人で行うもの。例え個々が強くても連携がなくては力を発揮することはできない」
「うん、その通り。じゃあもう分かったかい？ 星章は何故灰崎をGKに配置したのかを」
「……それは分からない」
「ありゃ。今の答え方が、星章学園の狙いに気づいたように聞こえたんだけど違ったか」
「……ごめんなさい。今のもデータから引っ張ってきて答えた」
なるほど。サッカーの理屈は分かっているようだ。なら、このヒントを上げれば分かるかな？
「A。Aはゴールから見えるフィールドはどのように見える？」
「ゴールから見た……フィールド？」
「そう」
Aは考え込むようにフィールドを見つめていた。
フィールドではゴールを離れた灰崎君の代わりにDF四人が身体を張ってゴールを守っていた。
豪炎寺が放った“ファイヤートルネード”は四人がかりで防がないとしのげない程、威力があるらしい。
「……ゴールから見た、フィールドの景色」
「見た事ないかな？」
「……ない。ずっとフィールド中を走ってきたから」
AAという選手がGKに下がったところは見た事も聞いた事もない。ただし、DFの経験はあるようだ。
「GKが難しいならDFで考えてみよう。……どうだい？」
果たして、今の彼女にその時の記憶があるのかな？
あれば答えられるだろうけど。
「……ごめんなさい。分からない」
DFをやっていた当時の記憶もないか。
……一体彼女の中にはどれだけの記憶が
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作者名：恵野 | 作成日時：2021年6月6日 0時
