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「星章の監督は大胆な事をしますね」
「やり方はともかく、監督の意図は分かる。しかし、当の灰崎君自身は理解していないようだね」
星章学園対木戸川清修
現在、両チームがフィールド入りをした所だ。間もなく試合が始まる。
「前回の試合でも星章の問題点は明らかでした」
「ふふっ。さて、どうなる事やら」
相変わらずAは会話に参加する事なく、今日も僕の隣にちょこんと座っている。
「A。何故、灰崎君はGKにされたと思う？」
「……分からない」
Aはまだ星章学園というチームをデータでしか知らない。実際に見たのは今日が初めてのはずだ。
「見ていれば分かるよ」
「分かった」
Aの視線はフィールドに向いたまま。
彼女の瞳がフィールドの何処を映しているのか気になるところだ。
なんせ目の前のフィールドには元チームメイトである豪炎寺修也と鬼道有人がいる。
彼女がどんな反応をするのか知りたいがために此処へと連れ出したのだ。……前の試合のような反応があるかもしれないからね。
「……早速攻めてきたか」
試合開始
キックオフから数秒後、木戸川清修は見事なチームプレイで星章学園の陣内奥へと攻め込む。
確かあのそっくり三人組は三兄弟だったかな。
ボールは豪炎寺へと渡った。こんなにも早く前線へと侵入してくるとはね。
「“ファイヤートルネード”！」
豪炎寺の必殺シュート“ファイヤートルネード”が星章学園ゴールへと向かっていく。
さて、灰崎君は止められるのかな？
「！ へぇ、そう来たか」
ゴールとボールの間に割り込んできたのは、星章学園のDF二人。
身体を張り、二人がかりで止めたようだ。
対するGKである灰崎君は腰が抜けたのか、その場に座り込んだ。
「ま、今の“ファイヤートルネード”は本気ではないね」
「はい」
本来の“ファイヤートルネード”はこんなものではないだろう。言うなればあれは、星章学園に対する牽制だ。
それは誰に対するものなのか。
「この屈辱に灰崎は耐えられますか？」
「これがあの人のやり方なんじゃない？」
「元雷門の鬼道有人……」
さて、彼女は本物の“ファイヤートルネード”を見てどう思ったのかな？
そう思いながら隣にいるAを見下ろした。
「……反応なし、か」
僕の予想なら、またあの反応をすると思っていたんだけど……偶然だったのかな。
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作者名：恵野 | 作成日時：2021年6月6日 0時
