光輝く破壊天使 (ページ15)

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観客席へ着くと既に席はほとんど埋まっていた。何処の席が空いているのか探す方が大変な程に、だ。フィールドには既に雷門イレブンと美濃道三イレブンが入っていた。

僕達が観戦する場所はここではない。場所を移動しようと歩いていると目の前からとある人物が向かって来ていた。

「星章の灰崎ですね」

「うん」

こちら側へと歩いてくるのは、星章学園所属のサッカープレイヤー『灰崎凌兵』だ。
向こうもこちらに気づいたようで、立ちはだかるように歩みを止め話しかけてきた。

「王帝月ノ宮の野坂悠馬。こんなローカルな試合に戦術の皇帝さんがお出ましとはな」

「ちょっと興味深いチームだと思ってね。君も此処にいるって事は、雷門に興味を持ったんじゃないのかな？」

灰崎君は僕の問いにすぐには答えず、すれ違い様に「暇だったんだよ」と言って、そのまま何処かへ行ってしまった。
彼に対し特に用はなかったため、そのまま自分たちの観客席へと移動する。

「今の人が“フィールドの悪魔”灰崎凌兵ですか」

「そうだよ。もしかしたら対戦するかもしれないから、マークしておくことに超したことはないよ」

「分かりました」

暫く歩いて着いた場所は誰一人もいない観客席だ。適当なベンチの背もたれの上に腰掛け、前のベンチの背もたれに足を置く。そのすぐ後ろに西蔭とAは立った。

「A。こっちにおいで」

自分の座るベンチの背もたれの隣を軽く叩き、此処に座れと指示する。前に西蔭にも座るように言ったのだが、断られてしまったんだよね。

でも、命令に従順な彼女は頷いてくれるだろう。

「……難しいですね」

「別に僕と同じ座り方をしなくても良いんだよ？」

「……では、そうします」

そう言ってAはベンチに腰掛けた。ちょこんと座るその様子は少し可愛らしい。

「所でどうして敬語なんだい？僕と君は同い年だろう？」

「それを言うのなら、西蔭政也も敬語です」

「彼は良いんだ。僕は君に言っているんだ」

「野坂さん！」

再び西蔭からの制止の声を掛けられる。
恐らく僕のやっている事に驚いているんだろう。

だけどね、これはある事を確かめる為にやっているんだ。
名前呼びにさせたのも、わざわざ敬語を外せと言ったのも。決して意味なくやっているわけじゃない。

「……分かった。悠馬」

やっと違和感のある敬語(・・・・・・・・)が外れた。
本来の彼女は普段から敬語を使わない。そんな気がしたんだ。
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