光輝く破壊天使 (ページ14)

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「A。出かけよう」

「出かける？何処へ？」

「行けば分かるよ」

王帝月ノ宮は全寮制だ。
それは転入生としてやってきた彼女も例外ではない。

戦術の皇帝として扱う駒をある程度把握しておかなければならない。それだけの理由だ。それ以上もそれ以下もない。

彼女の部屋は生活に不十分はないものの、女子らしいものが何一つない。
そして、この部屋に入ってきた時も彼女は部屋の中心にポツンと座り込んでいた。

僕が声を掛けるまでこちらに一切の反応を見せなかった。
まるで指示を待つだけの機械のように。

「ほら、外に出るための服に着替えて」

「……分かりました」

僕の言葉に彼女はその場で服を着替え始めた。
それも異性がいるという状況で。

別に気まずい訳ではないが、黙って見ておくのは失礼だろうと思い、側にいた西蔭に背を向けるよう言った。

僕も背を向け、彼女が着替え終わるのを待つ。

「……終わったかい？」

「どの服を着れば良いのか分かりません」

「仕方ないなぁ」

どうやら指示を貰わないと何もできないらしい。勝手ながら彼女の衣装ケースを開け、服を選んだ。振り返ればそこには下着姿のAがいた。異性から見られているというのに何の感情もないとは。

僕が選んだ服をAは黙って身に付けていく。パーカーを羽織った所を確認し、僕は彼女から背を向ける。

「さ、行こうか」

「はい、野坂さん」

僕の後ろを黙って着いてくる西蔭とA。
その間に会話はない。

「A」

「はい、野坂悠馬」

「僕の事は『悠馬』でいいよ」

「野坂さんッ」

「いいんだ」

少し彼女について調べてみた。
前はとある試合……スペインのチームバルセロナ・オーブとの試合だけで彼女を判断していた。しかし、それだけでは彼女を知り尽くすことは出来ない。上手く扱うこともできない。

今此処にいるチームメイトは昔馴染みが多い。しかし、彼女は画面越しで得られる情報でしか知り得ない存在だ。ならば共に過ごす時間を増やせば良い。そう結論づけた。

「悠馬」

「なんだい？」

「まだ何処に行くのか聞いていません」

「あぁ、そうだったね」

歩みを止め、後ろにいるAの方へ振り返る。
Aは僕を感情のない瞳で見上げていた。

「サッカースタジアム。試合を見に行くよ」

「試合？」

「ああ。美濃道三と雷門の試合をね」

目的地を告げ、僕は歩みを進めた。

「……らい、もん」

その時彼女がどんな表情を浮べていたのか、僕は知るよしもない。
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