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「日本を強くする為に暫くのお別れだな。でもワクワクするじゃないか！ 日本が世界と戦えるようになる日が来るんだ！」
「確かにな」
現在、俺達は鉄塔広場にいた。
夜も更け、此処から見える景色は街の光のみだ。
そんな夜景を俺の隣にいるAはこちらの会話に参加する事なくボーッと見つめていた。
「世界にはどんな奴がいるんだろう？ バルセロナ・オーブのクラリオみたいな奴がゴロゴロいるのかなぁ？」
「いくら何でもゴロゴロはいないだろうが……」
「だが、あれが世界標準のレベルだ」
「だったら。俺達はもっと特訓しないとな」
今でも思い出す。
バルセロナ・オーブの実力が世界レベル。俺達はその足下にすら立てていないのだ。
その為には特訓は必要だが、俺達雷門中サッカー部に与えられたのは全国のサッカーレベルを上げること。
自分だけ強くなるではダメなのだ。
「これからは個人としての力を上げるだけではダメだ。チームとしての連携、戦術、そして長い戦いを勝ち抜く為の戦略が必要だ」
「それが世界を勝ち抜く為のサッカーか！ 面白そうだな！」
「あー…、所で……」と円堂が申し訳なさそうにこちらを見る。
「サッカー強化委員って何やるんだっけ？」
円堂の言葉に俺は呆れ、鬼道は「話を聞いていなかったのか！？」と声を荒げた。
何を隠そう円堂の一言で俺達の派遣が決まっているのだ。当の本人が分かっていないでどうする……。
「全国各地の学校にあるサッカーチームに行くんですよ。それも、たった一人でそのチームを指導しなくてはいけません」
やっと口を開いたと思えば、Aは円堂にサッカー強化委員について説明を始めた。
こちらに背を向けていたAの表情をやっと見る事ができたが、その表情はどこか真剣さを映しているようだった。
「全員が違うチームかー。……ちょっと寂しいな」
「でも円堂さんならすぐに慣れそうです」
「え、何で？」
「聞いた話、このサッカー部を再び立ち上げたのは貴方じゃないですか。そしてここまで部員を集めた……そんな貴方ならどの学校に行っても大丈夫ですよ」
「そうだな。何処に行っても良いキャプテンになるだろうな」
「そうかぁ〜？」
Aの言葉に俺も鬼道も同感だった。
円堂ならどの学校でも上手くやるだろうと。
しかしその本人である円堂は自覚がないようで。その様子に少しだけ笑みを零した。
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作者名：恵野 | 作成日時：2021年6月6日 0時
