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「雷門はここまでのようですね」
「ふふっ、そうかな？ 星章の計算が間違っていなければいいのだけど」
試合再開
灰崎君の勢いは止まらず、雷門は押されている状態だ。
しかし……あの監督が何も考えていないとは思えない。それは星章の監督にも言えることかな。
「思い知れええぇぇ！！！」
灰崎君の全力のシュートを放つ。
それと雷門のゴールの間に割り込む者が。
「うッ！？」
その人物の正体は稲森君だ。前線からここまで戻ってきていたようだ。
体当たりで灰崎君のシュートを止めた稲森君はその場に仰向けで倒れ、ボールはGKがキャッチした。
勢いを止められ、シュートを阻まれ……その相手が稲森君という状況。一体彼はどう思っているんだろうね？
現在の雷門は灰崎君の勢いに負け、気持ちが落ちている。しかし、自分だけは違うと否定しているかのように、存在を主張しているのは稲森君だ。
彼のプレーが目立ってきている中、鳴り響くホイッスル。
前半戦終了のホイッスルだ。
顔を下げ、明らかに落ち込んでいる雷門。その中心に立って、励ましの言葉を掛けている稲森君。
……彼の存在がなければ、雷門はここで落ちているだろうね。
「……まだ食べていたのかい？」
そう尋ねると、Aは咀嚼を止め、こちらを見上げた。
光のない目と視線が合う。少し遅れてAはコクリと頷いた。
そういえば静かだった隣…Aの方を見る。……どうやらまだ食べていたらしい。まぁ、焼きそばにサンドは女の子には多かったかもしれない。
普通に見ていれば愛らしさを感じるけど、その本人は感情のない人形と似た存在だ。言われたことをそのまま行動に移す。これは人形というより機械と表した方がいいかもしれないね。
先程見た時より多く頬張ってもぐもぐと食べているAから目を離して、グラウンドに視線を移す。
「後半はどうなるのかな？」
ようやく姿を現わした雷門の監督……超金雲を捉える。
先程までベンチに座っていたのは偽物みたいだったからね。形だけは本物そっくりだったけど。
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作者名：恵野 | 作成日時：2021年6月6日 0時
