16 炎のエースストライカー ページ19
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「A。出かけるよ」
「また試合を見に行くの？」
「そうだよ。さ、着替えて」
もう見慣れた光景だが、今日は着ているパーカーのフードを被せた。何故被せたのかと言っているかのように、Aは不思議そうな顔でこちらを見上げた。
「それを被っているんだ。僕が良いと言うまでね」
「……分かった」
Aは理由を訊きたそうだったが、僕の言葉に頷き黙って後ろを着いてきた。
先日に引き続き、何故Aにパーカーを被せたのか。
それは数日前にオーナー……王帝月ノ宮のスポンサーである御堂院宗忠から呼び出され、指示されたからだ。
『野坂。あまりAを連れ回さないでくれるか』
『どうしてです？』
『彼女の存在はまだ非公開なんだ。もう暫く隠しておきたい』
何故、彼女の存在を隠したいのか。そこを問いただしたかったが……まぁ、この男が素直に吐いてくれるとは思わない。
ならば自分の頭で考え、答えを導くしかない。そう思っていた時だ。
『それに彼女は
『……契約者？』
『そうだ。連れ出すなら、しっかり監視をしておくように』
オーナーから明かされたAの情報。
……契約者？ 一体どういう意味なんだろう。突然出された情報に少しだけ固まっていた予想が崩れそうになった。
でもこれだけは確かだ。
彼女は間違いなく僕の目的に含まれる一人である事。……上手く扱えば、利用できるかもしれないという事。
「A。手を繋ごうか」
「うん」
何の疑いもなくAは差し出した僕の手を握った。その手は柔らかくて、女性らしい手だった。最近の僕の行動に西蔭は少し呆れているようで、今も納得できないと言うような表情をしている。
こうしてみると恋人同士に見えるのかな？それとも、兄妹かな？
……いいや、フードを被らせているから分からないかも。
Aは中学2年生の女の子にしては身長が低い。その分、筋肉が付いているみたい。女子としてはかなりついてる方だと思う。
……なんでそんなことを知っているのかって？
毎回彼女を呼びに行く度に着替える所を見ているからね。相変わらず恥を感じないみたいだけど。
「さ、会場に着いたよ。ライセンスカードを出して」
「うん」
ピッ、と機械音が鳴り、プレイヤーズゲートを抜ける。
行き先は、いつも通り周りに観客が誰一人いない観客席だ。
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作者名：恵野 | 作成日時：2021年6月6日 0時
