ホワイトデーの魔法 ページ10
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大学を卒業して、お互い就職先も決まって
おめでとう、おめでとうって言い合って
これから新しくそれぞれの道を進んで行くというのにわたしの心は曇ってる。
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出会いは入学式だった。
「…あ、ごめんなさい…！」
「だいじょうぶやで〜って、自分ケガしとるやん？！」
「…大丈夫ですから…」
「あかんよ！女の子はケガしたらあかんねん！」
女子校育ちのわたしにとっては、こんな出会いも大事件。
「自分、名前なんていうん？」
「山本Aです…」
「Aちゃんな！わかった！」
おれは大倉やで、そう言って にこって笑っただけなのに。
その一瞬で恋に落ちてしまった。
でも、どこか男っぽいわたしは忠義と付き合うなんてそんな関係にはならなくて。
親友、
男女を超えた仲の良さだったと思う。
そんな忠義は大阪での就職が決まって。
みんなよりも一足早く大阪に行くことになった。
「…じゃあな、」
「うん…なーんか寂しいなぁ」
「そやなぁ」
「頑張ってね、忠義。」
「Aもな？」
「そうだね笑、お互い頑張らなきゃ！」
「おん！」
「…また、東京来た時は教えてよ。」
「当たり前やし。A以外に東京来る意味ないし。」
「はいはい〜〜」
拗ねたように口を尖らせた忠義を笑顔で見送ったのは
1月のこと。
なんだか遠い昔のことみたい。
忠義と笑いあってた時間がどんどん消えてしまうみたいで怖い。
街はすっかりバレンタインで賑わってて。
はぁと白い息
吐き出したのは「後悔」
忠義とあんなにずっと一緒にいたのに、
チャンスはいくらでもあったのに、
そんなことを
ぼんやりと考えながら歩いていたら偶然見かけた看板。
【あげなきゃ始まらない】
【今年やらなきゃいつ渡すの？】
そんなありがちなキャッチコピーと共に売られていたピンク色の可愛い包装のチョコレート。
気づいたら手に取っていて。
気づいたら買っていて。
気づいたら忠義に送ってた。
どうにでもなれ、
せいぜい驚くがいい、忠義。
送ることでなんだかわたしもすっきりして。
気持ちに踏ん切りつけられた気がした。
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作者名：めー | 作成日時：2017年2月15日 22時
