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「…ほんと？」
「うん、ほんと。」
柔らかくそう言った隆平は
わたしの顔を自分の胸に押し付けた。
「……りゅーへー」
「チョコ…」
「え？」
「チョコみんなにあげるとか言うし、」
「え、…あ、うん」
「バレンタインやのに…なんか普通やし、」
「…」
「普通に俺にもあげるとか言うし、」
「…」
「俺のも その"みんな"と同じやし、」
「…」
「…イライラしてん。
やから…、チョコ奪ったらええんやって。
なんか思ってしもうて。
そしたら誰にもあげられへんし…」
「…隆平」
「ごめん、
でも…おれ、Aのこと好きやねん…」
顔をあげると、耳まで赤くして俯いてる隆平と目が合う。
隆平の首に手を伸ばして引き寄せる。
おでこをこちんと合わせた。
「…隆平のチョコは普通のじゃなかったよ。」
「へ、？」
「最初から、隆平は特別。」
「…やって！隆平のもあるよって…」
「普通のとは言ってないもん」
「…あ…」
「早とちり」
「ごめん…」
またシュンとなってしまった隆平を可愛いと思ったわたしは、相当この人が好き。
うん。
すき。
「ずっとずっと、隆平はわたしの特別だった。」
「…おれも。」
「いまも？」
「あたりまえやろ？」
長い睫毛が伏せられて目の下に綺麗な影ができる。
綺麗だなぁって見てたら、
目ぇ閉じて、って男の顔で言われて。
ドキドキしちゃうの。
「…りゅうへい、」
「うん？」
「すき…」
わかっとるよ、
口の端をあげてわたしを見た隆平。
「…チョコより甘いの、あげるから。」
わたしの知らない隆平もいいかもしれない、
なんてそんな呑気な考えは
キスにのまれて、溶かされてく。
チョコ泥棒 fin
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作者名：めー | 作成日時：2017年2月15日 22時
