＊＊＊ ページ7
.
お昼休み
さすがにチョコを返してもらおうと思い、隆平のクラスまで行くことに。
隆平の教室の前まで来てふと思った。
「…ここに来るのはじめてかも…」
一緒に帰る時だって、物を借りに来る時だって、くだらない話をする時だって、
いつも隆平が来てくれてたんだ…
そんなことを考えていたら、その教室がなんだか未知の世界に思えてしまって。
わたしの知らない隆平がそこにいるかもしれない、
わたしを必要としてない隆平がそこに…、
…自分でもなんでこんなこと考えてるのか分からない。
わたしってこんな陰気な子だったけ？
「はぁ…」
思わず盛大なため息をついたら、
「A？」
「っ、隆平！」
振り向けば
どうしたん？Aが来るなんてめずらしない？
と優しく微笑むいつもの彼で。
「…チョコ、返してもらいにきた」
「……あぁ…おん、ごめんなぁ、すっかり忘れとった〜
取ってくるから待っとって？」
「うん」
しばらくして、戻ってきた隆平。
「…はい、これ、ごめんな」
「ん、」
「…みんなにもらった？」
「うん」
「あ、あの、」
「ん？」
「男子には…あげるん？」
「クラスの人にはあげる約束だからね。」
そう言うと
そっか、と俯いた隆平。
表情が見えなくてよく分からないけど、
とりあえず隆平の手にある手提げを受け取ろうとした。
「……隆平？」
どうして？
隆平はわたしのチョコが入ったエコバッグを握って離さない。
「…A、あのさ、おれ、「丸山くん！」
突然知らない声に呼ばれた隆平は、我に返ったようにそれに応えた。
ちょっといい…？と頬を赤らめて隆平を見上げるその子は、
きっと大切な気持ちを伝えにきたんだね。
わたしなんかが邪魔しちゃいけないって思ってそっとその場を離れる。
チョコ、結局取り返せなかったなぁ
そんなに糖分とりたいのかなー
実は超カカオ好きです、とか？
…そんなの聞いたことない。
昔から知ってるはずの隆平なのに。
知らない顔してた。
どうしようもなく悲しくなって下を向くと
つま先がぼんやりとする。
「………りゅ、へ、」
1人で泣いてすっきりするつもりだったのに
背中に温もりを感じた時には
「A！」
もうあなたの声がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 29人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：めー | 作成日時：2017年2月15日 22時
