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「…うっま」
「そんな勢いよく食べたらやけどするよ？」
俺の食べる姿に、頬杖をついて目を細めるA。
「…やって、うまいんやもん」
「それはよかった！」
シチューを食べ終わるとソファーに座ってふたりでゆったり。
テレビのCMがバレンタイン仕様になった時
ふと
Aは俺の頬を、自分の手の平で撫でた。
「おつかれさま」
Aの瞳はゆらゆら揺れとって
俺の気持ちなんて全て分かってるよ、って言っとるみたいやった。
「おつかれさま」
もう一度ゆっくりとそう言ったAは
包むように俺を抱きしめた。
「おれ…」
「うん」
「…今年も…ちゃんと受け止められんかった、…」
俺のその言葉にふるふると首を振るA
「裕くんはちゃんと受け止めてるよ」
ファンだってちゃんと分かってる、と俺に言い聞かせる。
「…でも」
「うん」
「……こんなん、」
「うん」
「……やって！」
「うん」
やんわりと俺の頭を自分の胸に押し付けて
そうだね、って呟く。
言葉にならないどうしようもない思いが、
Aが俺の背中をたたく一定のリズムによって溢れる。
「おれ、…おれは……」
「裕くん…」
「…なぁ、どうしたらええ？おれはどうしたらええん？」
そう言うと
背中のリズムがとまる。
顔を上げると、Aの困った顔が見えて。
「…ごめん」
こんなこと、言うつもりやなかった。
ただでさえ
アイドルの俺を理解してくれて、支えてくれとるのに。
たくさん不安だってあるやろうに、
目の前のAを幸せにできなくて
ファンの子達を幸せにできるはずなんてなかったんや、
そんな当たり前のことに気づいて。
「きみくん、」
決心の目をしたAが今にも消えてしまうんやないかって
そう思ったら、
どうしようもなく悲しくなって
存在を確かめるように
きつくAを抱きしめた。
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作者名：めー | 作成日時：2017年2月15日 22時
