だまされました。

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「失礼しまーす……」

「おーおつかれー！」

「いらっしゃい」



わあ、ほんとにいた。
向かい合って座る菅田さんと中村さん。

……一瞬、怯んでしまうわたし。



「なにしてんの、早く入んなよ」

「あ、はいっ」



中村さんに笑いながら優しく急かされて、
一番近い、菅田さんのとなりの席へ。

そしたら、ニコニコと笑う顔と目が合って。



「ほんとだ、可愛いね」

「え？」

「将暉がAちゃん髪切ってて可愛いかったよーって言うから見てみたくてさ」

「えー……」



思わずその視線から逃げながら、
つい菅田さんを見てしまった。


だってあのとき、そんな会話してないのに。

直接さらっと言っちゃう中村さんもだけど、
知らないとこで言う菅田さんは、もっとずるい。



だけど菅田さんとは目が合わなくて。



「ちょっと倫也さん、わざわざ言わなくていいでしょ」



中村さんの方を向いて笑ってるその横顔が、
ほんのり赤くて。

それは本当だって白状してるようなもんで。



……や、何となくテレビとかで見てなんとなく知ってたよ。意外と恥ずかしがり屋なとこ。

だけど私ごときに、そんな照れるなんて。


ますます体温が上がった気がするわたし。



「ふふふ、面白いね君たち」



どうやらそんな様子に気づいたらしい中村さんが、菅田さんとわたしを交互に見ながら楽しそうに笑うから。


あーもう、ひたすら恥ずかしい。



「あそうだ、何か頼む？」



……わたしたちの気持ちをかき乱した張本人は、
何事もなかったようにメニューを開いてるし。



「じゃあ、ハイボールを……」



もう飲まなきゃついてけない気がして、
遠慮せず頼んじゃった。





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