18 ページ18
.
「……はぁ」
パタンとドアが閉まって、喧騒から切り離されれば、
一気に疲れが襲ってきて。
思わず、大きくため息をつく。
結局あのあと、中村さんにやんわりと帰るように言われてしまったわたし。
「もうおねむでしょ、今日は無理せず帰りな」
この子ども扱いからの、柔らかい表情が絶妙で。
……さすが人たらしの中村さん。
なぜだか素直に言うことを聞きたくなって、
今、タクシーに揺られてる。
でもきっと、正解だったんだよなぁ。
だってほら、もう限界だもん。
一瞬で、意識が遠く…………
「お客さーん、着きましたよー」
「ん……？あ、はいすいませんっ」
運転手さんの声に覚醒して、
慌てて返事してお金を払って。
タクシーを降りれば、いつもの見慣れたマンション。
…………なんか、急に現実。
あれ、もしかしてさっきまでのは夢？
まさかの夢オチ？
ってまあそんなことはないんだけど、でもそっちの方が都合がいいのは事実で。
だって今日は顔合わせって名目があっただけで、きっともう会うこともないし。いやあるとしたら最後の打ち上げだけど。
でもそれ以外は、関わりのない人達のはずで、
変に親近感持ったり期待したりなんて、以ての外で……
うん、そうだ、さっきまでのはただの夢！
もしくは一夜限りの超豪華な限定ファンイベント！
いい思い出にして、明日からまた頑張ろう！
というわけでおやすみなさ〜い！
もはややけくその変なテンションに突入して、
流れるようにシャワーを浴びて布団に入る。
目を閉じたら、一瞬で真っ暗闇。
夢を見る隙間もないくらいの、熟睡。
翌朝目が覚めれば、うん、もう大丈夫だ。
いつも通りのちょっと憂鬱な朝で。
そして私は、ただのOLさん。
「おはようございます」
「おはようございまーす」
ああ、これこれ。
とくに変わりばえのない職場に、いつも通りの同僚たち。このちょっと誇りっぽくて重たい空気が、懐かしくさえ感じる。
やっぱりここがわたしの場所だもんね。
とりあえず収録は続けるとして、それ以外は今まで通り。至って普通の、平凡な毎日だ。
……なんて思ってたわたしは、どうやらノーテンキすぎたみたいで。
わたしの平凡な日常なんて、もうどこにもなかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 499人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ハコ(プロフ) - コメントありがとうございます〜ただいま多忙につき更新停滞中で申し訳ございませんがのんびりお待ち頂けると嬉しいです´`*よろしくお願いしますﾍﾟｺﾘ(.. ) (2020年11月12日 9時) (
レス) id: 2cc286783b (このIDを非表示/違反報告)
Waaaaka03(プロフ) - とっても面白いです！トプコ好き、倫也さん好きの私には美味しすぎるお話しです！またぜひ更新楽しみにしてます！ (2020年11月10日 17時) (レス) id: cdc37d69d8 (このIDを非表示/違反報告)
そぼく(プロフ) - とても面白いです！更新楽しみにしています(^^) (2020年7月23日 1時) (レス) id: f0643b20a4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハコ | 作成日時：2020年5月22日 8時
